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運動すると記憶や勉強の成果は良くなるのか。運動と学習の研究

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Mizuno Wave Ibuki 2, men's trail running shoes. Olympus Hi-Res photo (Tripod mode)
Photo: Petar Milošević / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「運動すると頭が良くなる」と聞いて、勉強の前に走るべきか迷ったことはありませんか。結論から言うと、1回の軽い運動は記憶を少し助けるという研究が多くあります。ただし効果は大きくなく、運動しながら覚えるのは逆効果という結果もあります。運動は勉強の代わりではなく、勉強の「前後」に置く補助です。

3行でわかる

  1. 1回の有酸素運動のあとは、記憶テストの成績が少し良くなる。29件の研究をまとめた分析で確認されている。
  2. タイミングが大事。覚えた直後〜4時間以内の運動はプラス、運動しながら覚えるのは小さなマイナスだった。
  3. 何か月も続ける運動の効果は「小さい」。運動だけで成績が上がるわけではなく、思い出す練習などの勉強法が主役。

01「運動で頭が良くなる」は、どこまで本当か

本当なのは「1回の運動のあと、覚えたことが少し残りやすくなる」という部分です。運動を習慣にすれば勉強の成果が大きく上がる、とまでは言えません。

運動と記憶の研究は、大きく2種類に分かれます。

  • 1回の運動(20分ほど自転車をこぐなど)の直後に、単語を覚えたり思い出したりする実験。
  • 長く続ける運動(週3回を数か月〜1年など)のあとで、記憶や考える力を測る実験。

この2つは結果がかなり違います。「運動はいい」と一言でまとめると、違いが見えなくなります。

02科学的にわかっていること

1回の運動には記憶を助ける効果があり、特に「長く残る記憶」で目立ちます。長く続ける運動の効果は小さく、記憶への効果ははっきりしません。

Roigら(2013)[1]

運動と記憶の研究をまとめたメタ分析。1回の運動は、長く残る記憶に対して効果量 0.52(著者らの表現で「中〜大」)。一方、長く続ける運動の長期記憶への効果は 0.07 で、はっきりした差は出なかった。

対象: 1回の運動の研究29件、長く続ける運動の研究21件 / 限界: 実験ごとに運動の強さや記憶テストの種類がばらばらで、まとめた数字は目安にとどまる。

短い時間だけ覚えておく記憶(すぐ思い出すテスト)では、1回の運動の効果は 0.26、長く続ける運動は 0.15 でした[1]。どちらもプラスですが、大きな差ではありません。

Loprinziら(2019)[2]

25本の論文をまとめ、「いつ運動するか」で効果を比べたメタ分析。覚えたあと4時間以内の運動は d = 0.47 のプラス。運動しながら覚えたときは d = −0.12 で、わずかにマイナスだった。

対象: 主に20歳前後の大学生 / 限界: 覚えて4時間以上あとの運動(d = 1.05)は、2本の研究・3つの結果だけで、まだ当てにできない。覚える前の運動は d = 0.11 で、はっきりした差とは言えなかった。

この研究の数字を、タイミング別に並べました。

運動のタイミング効果量 d読み方
覚える前0.11ごく小さい(はっきりしない)
覚えながら−0.12わずかにマイナス
覚えた直後〜4時間以内0.47中くらいのプラス
覚えて4時間以上あと1.05研究が2本だけで未確定

数字はLoprinziら(2019)のメタ分析より[2]。研究の数が少ない行ほど、今後の研究で変わる可能性があります。

Ludygaら(2020)[3]

健康な人を対象にした80件のランダム化比較試験をまとめたメタ分析。長く続ける運動の、考える力全体への効果は「小さい」だった。体の動きの協調が必要な運動(コーディネーション運動)で効果がやや大きかった。

対象: 健康な人 / 限界: 記憶だけでなく、注意や判断なども含めた「考える力」全体の結果。女性では効果が小さめだった。

Ericksonら(2011)[4]

55〜80歳の120人を、週3回40分のウォーキング群と、ストレッチ群に分けて1年間続けた。ウォーキング群は、記憶に関わる脳の部分(海馬)の体積が約2%増え、ストレッチ群は約1.4%減った。

対象: アメリカの高齢者 / 限界: 記憶テストの成績は両方のグループで上がり、グループ間の差は確認されなかった。

この結果は有名ですが、その後14件の研究(737人)をまとめたFirthら(2018)では、運動による海馬全体の体積の増加ははっきりせず、左側だけで効果が見られました[5]。「運動で脳が大きくなる」と言い切るのは早いと考えられます。

また、多くの実験は大学生が単語リストを覚える短い課題です。仕事のあとに資格の勉強をする社会人で、同じ大きさの効果が出るとは限りません。

03今日からできる小さな一歩

運動は「覚えたあと」に置きます。勉強しながらの運動は避け、軽く息が上がる程度の運動を15〜20分から試します。

1

覚える勉強のあとに、20分歩く

単語や用語を覚えたら、その日のうちに(できれば4時間以内に)早歩きや軽いジョギングをします。少し息が上がる程度で十分です。

所要 15〜20分

2

歩きながら暗記カードをめくらない

運動しながら新しく覚えると、わずかに成績が下がるという結果があります。運動中は、すでに覚えたことを頭の中で思い出す程度にします。

所要 0分

3

翌日、見ずに思い出してみる

運動の効果は小さいので、主役は勉強法です。前日の内容を見ずに書き出し、言えなかった所だけ見直します。やり方は思い出す練習の記事で紹介しています。

所要 5分

持病がある人や体調に不安がある人は、無理のない範囲で行ってください。この記事は運動の指導や医療の助言ではありません。

04続けるためのコツ

運動を「勉強の締めくくり」として決まった順番に組み込むと、どちらも続けやすくなります。成果を運動だけに期待しすぎないことも大切です。

  • 「暗記15分 → 散歩20分」を1セットにして、毎日同じ順番で行う。
  • 通勤や買い物の歩きを、勉強のあとの時間帯に寄せる。
  • 雨の日は室内で階段の上り下りなど、代わりの運動を先に決めておく。
  • 夜遅くの激しい運動で睡眠を削らない。学んだあとの睡眠も記憶を助けます(睡眠と記憶の記事)。

歩くことと気分の研究は、姉妹メディアの記事「散歩すると気分は軽くなる?」で紹介しています。勉強で疲れた日の気分転換にも使えます。

05よくある質問

勉強の前と後、運動するならどっち?

研究では「後」の方が効果がはっきりしています。Loprinziら(2019)のメタ分析では、覚えたあと4時間以内の運動は d = 0.47 のプラスでした。覚える前の運動は d = 0.11 で、はっきりした差は出ていません。

運動しながら勉強すると効率がいいの?

新しく覚えるときは、おすすめしにくいです。同じメタ分析では、運動しながら覚えた場合の効果は d = −0.12 で、わずかにマイナスでした。運動中は、すでに覚えたことの確認にとどめるのが無難です。

運動を習慣にすると、記憶力は上がるの?

効果はあっても小さいと考えられます。Roigら(2013)では、長く続ける運動の長期記憶への効果ははっきりしませんでした。80件の試験をまとめたLudygaら(2020)でも、考える力への効果は「小さい」という結果でした。

勉強法の早見表で「覚えた後に体を動かす」の判定を見る
ほかの勉強法も30種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。

出典

  1. Roig, M., Nordbrandt, S., Geertsen, S. S., & Nielsen, J. B. (2013). The effects of cardiovascular exercise on human memory: A review with meta-analysis. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 37(8), 1645–1666. https://doi.org/10.1016/j.neubiorev.2013.06.012
  2. Loprinzi, P. D., Blough, J., Crawford, L., Ryu, S., Zou, L., & Li, H. (2019). The temporal effects of acute exercise on episodic memory function: Systematic review with meta-analysis. Brain Sciences, 9(4), 87. https://doi.org/10.3390/brainsci9040087
  3. Ludyga, S., Gerber, M., Pühse, U., Looser, V. N., & Kamijo, K. (2020). Systematic review and meta-analysis investigating moderators of long-term effects of exercise on cognition in healthy individuals. Nature Human Behaviour, 4(6), 603–612. https://doi.org/10.1038/s41562-020-0851-8
  4. Erickson, K. I., Voss, M. W., Prakash, R. S., et al. (2011). Exercise training increases size of hippocampus and improves memory. Proceedings of the National Academy of Sciences, 108(7), 3017–3022. https://doi.org/10.1073/pnas.1015950108
  5. Firth, J., Stubbs, B., Vancampfort, D., Schuch, F., Lagopoulos, J., Rosenbaum, S., & Ward, P. B. (2018). Effect of aerobic exercise on hippocampal volume in humans: A systematic review and meta-analysis. NeuroImage, 166, 230–238. https://doi.org/10.1016/j.neuroimage.2017.11.007