AIと独学

AIはなぜ、もっともらしい間違いを自信ありげに答えるのか?「ハルシネーション」の仕組みと、独学で間違いやすい質問

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開いた小さな本と虫めがね
Photo: Auckland Museum Collections from Auckland, Aotearoa New Zealand / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

AIに聞くと、迷いのない文章で答えが返ってきます。ところが調べ直すと、年号や人名、論文の題名がまちがっていた。しかも、まちがっているときも口調は自信たっぷり。独学でAIを使っていると、こうした経験に戸惑うことがあります。これは偶然の故障ではなく、AIの作られ方と評価のされ方から起きやすいことが、研究で説明されています。

3行でわかる

  1. AIは、学習した文章の中で一度しか出てこない細かい事実(誕生日や一度きりの数字など)ほど外れやすい。文法のように何度も出てくる決まりは、ほとんど外さない。
  2. 多くの性能テストは正答率で採点され、「わからない」と答えても点にならない。そのため、自信がなくても推測で答える方が得になりやすい。
  3. 同じ質問をくり返して答えがぶれる所は、まちがいの可能性が高い。ChatGPTが作った文献の一覧では、実在しない文献がGPT-3.5で55%、GPT-4で18%あった。

01 悩みの正体AIは、なぜ自信ありげにまちがえる?

AIは「次に来そうな言葉」を予測するように作られており、めったに出てこない事実は当てにくいからです。さらに、推測で答える方が評価で得をする仕組みが、まちがいを残してしまいます。

AIがもっともらしい誤りを答えることをハルシネーションと呼びます。Kalaiらは、その原因を2段階で説明しました[1]。

1つ目は、作り始めの学習です。AIは大量の文章から「次に来る言葉」を予測するように学びます。文法やつづりのように何度も出てくる決まりは身につきます。ところが、ある人の誕生日のように学習データに一度しか出てこない事実は、パターンとして学べません。著者らは、データにまちがいが1つもなくても、こうした誤りはなくならないことを理論的に示しました。

2つ目は、その後の評価です。AIの性能は、多くの場合「正答率」で比べられます。正答率では「わからない」は0点で、推測が当たれば1点です。著者らはこれを、難しい試験問題で、空欄にせずに推測で埋める受験生にたとえています。推測が得になる採点が続くかぎり、AIは自信がなくても答えを作りがちになります。

口調が自信ありげなのは、正しさとは別の話です。AIの説明が「わかった感じ」を強める仕組みは、AIの説明を読むとわかった気になるのはなぜ?にまとめています。

02 科学的にわかっていることAIのまちがいは、どのくらい起きる?

文献を挙げさせた調査では、実在しない文献が2割〜9割の割合で混ざっていました。同じ質問をくり返すと答えがぶれる所は、まちがいを見つける手がかりになります。

Kalaiら(2026)[1]

学習の理論を使い、学習データに一度しか出てこない事実の割合が、AIがまちがえる割合の下限の目安になることを示した。たとえば誕生日の事実の20%が一度しか出てこないなら、作り始めの段階のAIは誕生日の少なくとも約20%でまちがえる、とした。一方、何度も出てくる国の首都では、めったにまちがえない。また、よく使われる性能テストの多くは「わからない」に点を与えず、推測を有利にしていた。

対象: 理論的な分析と、性能テストの採点方法の調査 / 限界: 人がAIで学ぶ場面を調べた実験ではない。「20%」は説明のための例で、実際のAIのまちがいの割合ではない。

Farquharら(2024)[2]

同じ質問に何度か答えさせ、答えの「意味」がぶれるかどうかを調べる方法を作った。たとえば薬の標的を聞くと、AIは同じ指示でも正しい答えとまちがった答えを行ったり来たりした。こうした「ぶれ」の大きさは、まちがった答えを見分ける手がかりになった(30の組み合わせの平均で、見分ける力を表す指標が0.790。0.5は当てずっぽう、1は完全)。

対象: 複数のAIと、雑学・医学・算数などの質問データ / 限界: 著者らも、AIが毎回同じようにまちがえる場合(データの誤りを覚えている場合など)は見つけられないとしている。

WaltersとWilder(2023)[4]

ChatGPTに42のテーマで短い文献レビューを書かせ、挙げられた文献636件を調べた。実在しない文献は、GPT-3.5で55%、GPT-4で18%だった。実在する文献でも、GPT-3.5の43%、GPT-4の24%に、内容にかかわる書きまちがいがあった。

対象: ChatGPT-3.5とGPT-4が書いた84本の文章 / 限界: 2023年時点のAIで、文献の挙げ方に限った調査。

Chelliら(2024)[3]

肩の腱板の病気についての11本のシステマティックレビュー(研究を網羅的に集めるまとめ)と同じ選び方の条件を与えて、AIに文献を集めさせた。題名・筆頭著者・年のうち2つ以上がまちがっている文献を「作り話」と数えると、その割合はGPT-3.5で39.6%、GPT-4で28.6%、Bardで91.4%だった。

対象: 3つのAIが挙げた文献471件 / 限界: 医学の1分野で、論文を集める課題に限った調査。

ここで紹介した数字は、調べた時点のAIと課題での結果です。AIは改良が続いており、まちがいの割合は変わっていきます。それでも、一度しか出てこない細かい事実が外れやすいという仕組みは、勉強でAIを使うときの注意点として役に立ちます。

03 今日からできる小さな一歩勉強中、AIのまちがいに気づくには?

数字・人名・年号・文献など「細かい1つの事実」は、必ず教科書や公式の資料で確かめます。迷ったら、同じ質問を聞き直して答えがぶれないかを見ます。

1

答えの中の「細かい事実」に印をつける

年号、人名、数字、条文の番号、論文の題名に下線を引きます。一度しか出てこないような事実ほど外れやすいので、確かめる優先順位を高くします[1]。

所要 2分

2

同じ質問を、新しい会話で2〜3回聞き直す

研究では、答えの意味がぶれる所ほどまちがいが多くありました[2]。研究の方法を手作業に当てはめた、この記事の提案です。ただし、毎回同じ答えでも正しいとは限りません。ぶれない誤りもあるからです。

所要 3分

3

印をつけた所を、教科書や公式の資料で確かめる

文献なら題名で検索して実在を確かめます。AIが挙げた文献には、実在しないものが混ざっていました[3][4]。確かめられなかった事実は、ノートに写さないでおきます。

所要 5〜10分

04 続けるためのコツAIで勉強を続けながら、まちがいを覚えないためには?

AIの答えをそのままノートに写さず、確かめた事実だけを残す習慣にします。すでにまちがって覚えたときの直し方もあります。

  • 「わからない」と言ってよいと伝える。質問の最後に「確かでなければ、わからないと答えて」と書き添えます。推測を有利にしない採点のしかたを、著者らが提案していることにもとづく、この記事の応用です[1]。効果を確かめた研究ではありません。
  • 使う前・使った後の確認を決めておく。確かめる項目はAIで勉強するときのチェック表にまとめています。
  • まちがって覚えてしまったら。正しい答えに覚え直すやり方はAIの答えが間違っていて、誤ったまま覚えてしまったらにあります。

05よくある質問

新しいAIなら、もうまちがえない?

まちがいは減ってきていますが、なくなってはいません。研究者は、学習データに一度しか出てこない事実のまちがいは、データに誤りがなくても残ると理論的に示しています[1]。文献の調査でも、新しいGPT-4の方が少なかったものの、実在しない文献が18%ありました[4]。

AIが自信ありげに答えたら、正しいと考えていい?

口調の自信は、正しさの目安になりません。AIは自信がなくても推測で答えた方が評価で得をしやすい、と研究者は指摘しています[1]。数字や人名など細かい事実は、口調にかかわらず確かめます。

同じ質問を何回聞けば安心?

何回なら安心という決まりはありません。答えがぶれる所はまちがいの手がかりになりますが[2]、毎回同じまちがいをすることもあります。大事な事実は、教科書や公式の資料で確かめるのが確実です。

出典

  1. Kalai, A. T., Nachum, O., Vempala, S. S., & Zhang, E. (2026). Evaluating large language models for accuracy incentivizes hallucinations. Nature, 653(8116), 1047–1051. https://doi.org/10.1038/s41586-026-10549-w
  2. Farquhar, S., Kossen, J., Kuhn, L., & Gal, Y. (2024). Detecting hallucinations in large language models using semantic entropy. Nature, 630(8017), 625–630. https://doi.org/10.1038/s41586-024-07421-0
  3. Chelli, M., Descamps, J., Lavoué, V., Trojani, C., Azar, M., Deckert, M., Raynier, J.-L., Clowez, G., Boileau, P., & Ruetsch-Chelli, C. (2024). Hallucination rates and reference accuracy of ChatGPT and Bard for systematic reviews: Comparative analysis. Journal of Medical Internet Research, 26, e53164. https://doi.org/10.2196/53164
  4. Walters, W. H., & Wilder, E. I. (2023). Fabrication and errors in the bibliographic citations generated by ChatGPT. Scientific Reports, 13, 14045. https://doi.org/10.1038/s41598-023-41032-5