教科書の図やグラフ、読み飛ばしていない?文と図を見比べて理解する読み方6つの手順(図の読み方の研究とその限界)

教科書の図やグラフを、なんとなく眺めて先へ進んでいませんか。目の動きを調べた研究では、子どもたちは図をほとんど見ずに、主に文から学んでいました。図の読み方を教わると図を見る時間が増え、図と文をつなぐ理解も深まりました。ただ大人の研究では、用語などの前提知識が足りない段階では効きにくく、まず用語を押さえてから図と文を見比べるのが研究に沿った順番です。
3行でわかる
- 10歳の子どもは教科書の図をほんの少ししか見ておらず、学びは主に文から進んでいた。
- 図の読み方を10〜20分教わった小学4年生は、図を見る時間が約2倍になり、図と文をつなぐ問題の正答が50%から72%に増えた。大学生の研究では全体として効かず、前提知識しだいだった。
- やり方は、①用語を先に押さえる ②タイトルと説明文 ③ラベル・軸・単位 ④図を指す文と見比べる ⑤全体の形 ⑥図の言いたいことを1文で書く。
01 悩みの正体教科書の図やグラフ、なぜ読み飛ばしてしまう?
多くの人は文を中心に読み、図はほとんど見ていません。図は「文のおまけ」ではなく、文と見比べてはじめて意味がつながるものです。見比べる手順を知らないと、図は飛ばされやすくなります。
資格試験のテキストや専門書には、グラフ・表・図解がたくさん出てきます。けれど、読み終えて思い出せるのは文の方だけ、という人は多いはずです。
目の動きを記録した研究では、10歳の子どもは教科書の図をほんの少ししか見ていませんでした[1]。学びは主に文から進んでいました。図を見るのは、意識しないとなかなか起きない読み方です。
もう1つの理由は、図を読むには「どこを見て、文のどこと結びつけるか」という手間がかかることです。その手間は、もともとその分野を知っているほど小さくなります。
02 科学的にわかっていること図の読み方を練習すると、理解は深まる?
図の読み方を教わった子どもは、図を見る時間が約2倍になり、図と文をつなぐ問題の正答も増えました。ただ大学生では、練習や工夫が全体として効かなかった研究が複数あり、効き方は前提知識しだいでした。
HannusとHyönä(1999)[1]
10歳の子どもで調べた。図があると、図に描かれた内容は覚えやすくなったが、図のない内容は変わらなかった。理解が深まったのは、成績の高い子どもだけだった。目の動きを記録すると、子どもは図をほんの少ししか見ておらず、成績の高い子どもは、文と図の大事な部分に時間を多く使っていた。
対象: 成績の高い子と低い子 / 限界: 子どもの研究。人数などの細かい数値は、要旨では確認できなかった。
Jian(2018)[2]
台湾の小学4年生に、3つの読み方を10〜20分教えた。①図を指している文を探し、図と合っているか確かめる ②ラベルを全部読み、各部分の形や位置を見る ③図のタイトルと説明文を読み、図と合っているか確かめる。教わった組(31人)は図を見る時間が46.7秒と、教わらなかった組(31人)の21.7秒の約2倍になった。文から図へ目を移す回数も16.5回と5.9回だった。テストの正答率は71%と61%、図と文をつなぐ問題では72%と50%だった。
対象: 小学4年生62人、花のつくりの文章1つ / 限界: 時間をおいたテストはない。文の内容だけを問う問題では差がなかった。
Seufert(2019)[3]
大学生30人を15人ずつに分け、片方に「文と図を結びつける手順」を90分のワークブックで教え、3週間練習してもらった。手順は、図の種類を見分ける・大事な部分を探す・全体の形を見る・文と図で対応する所を見つける・図の言いたいことを書き出す、など。結果は、全体としては効果がなかった。前提知識の多い人ほど、練習した組で成績が高かった。
対象: 心理学・教職課程の大学生、平均23.5歳 / 限界: 人数がとても少ない。著者は「前提知識が足りないと効かないか、かえって妨げた」と書き、このままでは勧められないとしている。
Vogtら(2020)[4]
情報科学の大学生124人が、プログラミングの内容を学んだ。図の有無と、色分けなどの目印の有無を組み合わせた4つの組をくらべたが、全体の成績(50〜53%)に差はなかった。前提知識で分けると、知識の少ない人はどの支えでも役立ち、知識の多い人では、目印がかえってじゃまになっていた。
対象: ドイツの大学の任意の講座 / 限界: 2週間の講座で、成績に関係しないため、全体に点が低かった。知識別の比較は数値の傾向で、統計的な検定はしていない。
Hochら(2021)[5]
中学2年〜高校1年にあたる168人に、文と図を結びつけるなどの学び方を教え、一部には途中でのうながしや「もし〜なら〜する」の計画も足した。学び方を使う回数は増えたが、学んだ内容のテストの点は、何もしない組と変わらなかった。
対象: ドイツの生徒、細胞分裂の教材 / 限界: 著者らは、支え方の質や、生徒に合っていたかが原因かもしれないとしている。
まとめると、図を「ちゃんと見る」読み方は教えれば身につき、子どもでは理解も深まりました。一方で大学生などの研究では、手順を教えるだけで成績が上がるとは言えず、前提知識が足りない段階ではうまく働きませんでした。どれも数日〜数週間の実験で、社会人が一人で長くテキストを読む独学とは条件がちがいます。
03 今日からできる小さな一歩教科書の図は、どんな順番で読めばいい?
まず用語を押さえ、図のタイトルと説明、ラベル・軸を読みます。次に本文の中で図を指す文を探して見比べ、全体の形をつかみ、図の言いたいことを1文で書きます。
その章の用語を、先にざっと押さえる
知らない用語だらけの段階では、図を読む手順はうまく働きませんでした[3][4]。章の太字の用語だけ先に確かめておきます。難しすぎるときは教科書が難しくて読めないときの記事の順で進めます。
所要 5分
図を飛ばさないと決め、タイトルと説明文を読む
図の上や下にあるタイトル・説明文(キャプション)を読み、「この図は何を見せたいのか」を確かめます[2]。
所要 1図30秒
ラベル・凡例・軸・単位を、全部読む
グラフなら縦軸と横軸が何で、単位は何か。図解なら、矢印や名前のついた部分を1つずつ見ます[2][3]。
所要 1図1分
本文の中で、図を指している文を探して見比べる
「図2のように」「〜が増えている」などの文を見つけ、図のどこのことかを指でたどります。教わった子どもは、文から図へ目を移す回数が約3倍になっていました[2]。
所要 1図2分
全体の形を見る
増えているか減っているか、どこが一番大きいか、何と何を比べているか。細かい数字より先に、全体の形を言葉にします[3]。
所要 1図1分
図の言いたいことを1文で書き、文にしかないことも1つ書く
「この図は〜を示している」と余白に1文書きます。図には描かれていない、本文だけの説明も1つ書き添えます[3]。自分で描き直すやり方は描いて覚える記事にあります。
所要 1図2分
図の種類ごとに、見る場所の目安です。研究の結果そのものではなく、上の手順を図の種類に当てはめた整理です。
| 図の種類 | 最初に見る所 | 1文で書くこと |
|---|---|---|
| 折れ線・棒グラフ | 縦軸と横軸、単位、凡例 | 何が増え(減り)、どこが一番か |
| 表 | 行と列の見出し、単位 | どの行・列を比べると違いが大きいか |
| しくみの図解 | 名前のついた部分、矢印の向き | 何がどの順で、どこへ動くか |
| 流れ図(フローチャート) | 始まりと終わり、分かれ道の条件 | どんな条件で、どちらへ進むか |
04 続けるためのコツ図を読む手順を、毎回やるのは大変では?
全部の図でなくて構いません。各章で大事そうな図を1〜2枚だけ選び、手順どおりに読みます。慣れてきた分野では、手順をはぶいても大丈夫です。
- 章を読む前に見出しと図だけを眺めておくと、どの図が大事か見当がつきます。やり方は見出しを先に読む記事にあります。
- 知識が増えた分野では、色分けなどの支えがかえってじゃまになった研究もありました[4]。手順は「わからない図」に使います。
- 読み終えたら、図を隠して「この図は何を示していたか」を言ってみます。理解度チェック表に書き残すと、読み直す所がわかります。
05よくある質問
教科書の図やグラフは、読み飛ばしても大丈夫?
大事な図は飛ばさない方がよいと考えられます。子どもの研究では、図をほとんど見ずに文だけで学んでいる様子が記録され、図の読み方を教わると、図と文をつなぐ問題の正答が50%から72%に増えました。ただ大人の研究では効果がはっきりしないものもあり、各章で大事な図を1〜2枚選んで丁寧に読むのが現実的です。
図と文、どちらを先に読むべき?
研究では、どちらが先かより、行き来することが大事にされています。図の読み方を教わった子どもは、文から図へ目を移す回数が約3倍になりました。おすすめは、図のタイトルとラベルを先にざっと見て、本文で図を指す文が出てきたら図に戻る読み方です。
グラフが苦手で、見てもよくわかりません。どうすれば?
まず縦軸と横軸が何を表し、単位が何かだけを確かめます。それでもわからないときは、その分野の用語がまだ足りないのかもしれません。大学生の研究では、前提知識が少ないと図の読み方の練習がうまく働きませんでした。用語を先に押さえてから、もう一度グラフに戻りましょう。
出典
- Hannus, M., & Hyönä, J. (1999). Utilization of illustrations during learning of science textbook passages among low- and high-ability children. Contemporary Educational Psychology, 24(2), 95–123. https://doi.org/10.1006/ceps.1998.0987
- Jian, Y.-C. (2018). Reading instructions influence cognitive processes of illustrated text reading not subject perception: An eye-tracking study. Frontiers in Psychology, 9, 2263. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2018.02263
- Seufert, T. (2019). Training for coherence formation when learning from text and picture and the interplay with learners' prior knowledge. Frontiers in Psychology, 10, 193. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.00193
- Vogt, A., Klepsch, M., Baetge, I., & Seufert, T. (2020). Learning from multiple representations: Prior knowledge moderates the beneficial effects of signals and abstract graphics. Frontiers in Psychology, 11, 601125. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.601125
- Hoch, E., Scheiter, K., Stalbovs, K., & Gerjets, P. (2021). The intention was good: How promoting strategy use does not improve multimedia learning for secondary students. British Journal of Educational Psychology, 91(4), 1291–1309. https://doi.org/10.1111/bjep.12417


