「覚えた」と判断していい?暗記の自己チェック表。答えを隠し、時間をおいて確かめる(覚えた感覚の研究から)

単語カードを1周して「よし、覚えた」。なのに数日後のテストでは出てこない。そんな経験は、記憶力が弱いせいとは限りません。研究では、「覚えた」と判断するタイミングと方法しだいで、その判断が大きく外れることがわかっています。この記事では、その研究を「覚えた」に印をつける前のチェック表と、1項目ずつの記録表にしました。
3行でわかる
- 答えを見ながら、または覚えた直後に「覚えた」と判断すると、外れやすい。答えを隠し、時間をおいてから判断すると見分けの正確さが上がる(112の効果量をまとめた分析で g = 0.93)。
- 1回思い出せただけでカードを外すと、後で忘れやすい。533人の実験では「その場で3回正解するまで練習し、その後、間をあけて3回覚え直す」組み合わせが勧められた。
- チェック表は「隠す・時間をおく・3回正解・間をあけて覚え直す」の4点にまとめた。大学生の実験室研究がもとなので、社会人の長期の独学では回数を目安として使う。
01 この表でできること「覚えた」と思ったのに、テストで出ないのはなぜ?
覚えた直後や答えが見えている状態では、本番と条件が違うため「覚えた」と感じやすいからです。判断する条件を本番に近づけると、外れにくくなります。
勉強しているときは、答えが目の前にあります。テストでは、答えは自分で思い出すしかありません。この違いのせいで、勉強中は「わかる」「覚えた」と感じやすくなります。Koriatと Bjork(2005)は、これを勉強中の「できる」という錯覚と呼びました[2]。
もう1つの落とし穴は、1回思い出せた時点で「覚えた」とやめてしまうことです。自分で練習を決められる条件では、多くの人が1回思い出せた単語をすぐ外し、その結果、後で思い出せる量が少なくなりました[4]。
「わかったつもり」の仕組みは覚えたつもりなのにテストで書けないのはなぜかに、カードの使い方は暗記カードの効果的な使い方にまとめています。この記事は、その判断を表で確かめる道具です。
02 表の根拠になった研究「覚えたか」の判断は、どうすれば正確になる?
答えを隠し、学んだ直後ではなく時間をおいてから判断すると正確になります。さらに、1回正解で終わらず、何回か正解してから、日をあけて覚え直すと長く残ります。
RhodesとTauber(2011)[1]
「後で思い出せるか」の予想を、学んだ直後ではなく時間をおいてから行うと、どの項目を覚えていてどれを忘れているかの見分けがはっきり正確になった。
g = 0.93
4,554人・112の効果量をまとめたメタ分析(多くの研究をまとめて分析する方法)。時間をおいて予想すること自体も、覚える量をわずかに増やした(3,807人・98の効果量で g = 0.08)。
対象: 主に実験室で単語の組などを覚えた参加者 / 限界: 見分けの正確さの研究で、「覚えた量」を大きく増やす方法ではない。
KoriatとBjork(2005、2006)[2][3]
答えが見えている状態で「覚えた」と判断すると、本番で問いだけを見たときより高く見積もりやすい。この過大な見積もりは、一度テストを体験することや、判断を学んだ直後から遅らせることで小さくなった。
対象: 単語の組(手がかりと答え)を覚える実験の参加者 / 限界: 単語の組の実験で、文章の理解や計算問題でも同じかは別に確かめる必要がある。
Karpicke(2009)[4]
外国語の単語を覚える4つの実験で、くり返しテストすると長く残った。ところが自分で選べる条件では、多くの人が思い出せた単語をすぐ外し、その後の成績が下がった。「一度思い出せたら覚えた」と思い込むことが原因と著者は結論づけている。
対象: 外国語の単語を学んだ実験の参加者 / 限界: 実験室の短い学習で、数か月の独学で同じ大きさの差が出るかはわからない。
RawsonとDunlosky(2011)[5]
533人の学生が、用語などを思い出す練習で覚えた。最初の日に1〜4回正解するまで練習し、その後1〜5回、日をあけて覚え直した。1〜4か月後の成績と練習の手間から、著者らは「最初に3回正解するまで練習し、その後、大きく間をあけて3回覚え直す」ことを勧めた。
対象: 3つの実験の大学生533人、10万件以上の回答を手で採点 / 限界: 覚え直しを重ねるほど、最初の正解回数の差は小さくなった。3回は目安で、決まった正解ではない。
KornellとBjork(2008)[6]
単語カードで「覚えたカードを外してよい」条件にすると、4つの実験で、成績が少しずつ一貫して下がった。外すかどうかの判断が、覚え具合の見積もりに頼っているためと著者らは考えている。
対象: 単語カード形式で学んだ参加者 / 限界: 下がり方は小さい。外すこと自体より、外す判断の早さが問題とされる。
ここで紹介した研究の多くは、大学生が実験室で単語や用語を覚えたものです。社会人が数か月かけて資格や語学を学ぶ場面では、仕事の疲れや間のあき方が違います。回数や日数は「この程度からなら試す価値がある」目安として使ってください。
03 チェック表の使い方「覚えた」に印をつける前に、何を確かめる?
答えを隠したか、時間をおいたか、何回正解したか、日をあけて覚え直したかの4点です。全部に印がつくまで、その項目は「覚えた」に移しません。
表1 「覚えた」に印をつける前のチェック表
| 確かめること | やり方 | 根拠 |
|---|---|---|
| □ 答えを隠して判断した | 答えを手や紙で隠し、問いだけを見て声に出すか書く。「見ればわかる」は数えない | 答えが見えると過大に見積もる[2][3] |
| □ 時間をおいてから判断した | 覚えた直後には判断しない。ほかの項目をひととおりやってから、または次の日に確かめる | 時間をおいた判断は見分けが正確(g = 0.93)[1] |
| □ その日のうちに3回正解した | 1回正解しても外さず、束の後ろに戻す。正解が3回たまったら、その日は終わり | 1回正解で外すと成績が下がる[4][6]、3回が勧められた[5] |
| □ 日をあけて覚え直した | 数日〜1週間以上あけて、もう一度1回正解するまで練習する。これを3回 | 覚え直しは長く残る効果が大きく、手間は少ない[5] |
復習の日をいつにするかは、復習日の計算機で試験日から逆算できます。
表2 1項目ごとの記録表(ノートや単語カードの裏に書き写して使う)
| 項目 | 初日の正解 | 覚え直し1 | 覚え直し2 | 覚え直し3 |
|---|---|---|---|---|
| (例)mitigate | 正正正 10/17 | 10/20 正 | 10/27 | |
| (例)減価償却の定義 | 正正 10/17 | |||
記入例は説明用で、研究の内容ではありません。初日の欄には正解するたびに「正」を書き、3つたまったら日付を書きます。覚え直しの欄は、その日に答えを隠して1回目で言えたら「正」、言えなかったら言えるまで練習して日付だけ書きます。
答えを隠して、問いだけで思い出す
言えたら記録表に「正」。言えなければ答えを見て、束の後ろに戻します。
所要 1項目10〜30秒
「正」が3つたまるまで、その日は外さない
1回目の正解は、直後で記憶が新しいだけのことがあります。束をひととおり回してから戻ってきたときに言えるかで確かめます。
所要 20項目で15〜20分
日をあけて覚え直す日を3回決める
数日後、1週間後、さらに後など、間を広げます。覚え直しは1回正解すれば終わりなので、初日より短く済みます。
所要 1回5〜10分
表1の4つに印がついたら「覚えた」に移す
それでも試験前には、ときどき混ぜて確かめます。印は「もう見なくてよい」ではなく「優先度を下げてよい」の意味です。
所要 1分
04 続けるためのコツ項目が多くて全部回らないときは?
1回に扱う項目を減らし、覚え直しの日を優先します。初日の練習より、日をあけた覚え直しの方が、少ない手間で長く残ると報告されています。
- 新しい項目の数を減らす。3回正解の条件を守ると、1項目にかかる時間が増えます。1日20個ほどから始めて調整します(20個は研究の数字ではなく目安です)。数を減らしても、条件は崩さない方が後で楽です。
- 覚え直しの日を先にカレンダーに書く。研究で長く残る効果が大きかったのは、日をあけた覚え直しでした[5]。
- 「覚えた」を外す日を決めない。外した項目も、週に1回ほど混ぜて確かめます。外す判断は早すぎるほど成績が下がります[6]。
- 覚え直しがたまってしまったら、復習がたまって追いつかないときの立て直し方を使います。
05よくある質問
「覚えた」かどうかは、いつ確かめるのがいいですか?
覚えた直後ではなく、時間をおいてからです。4,554人・112の効果量をまとめた分析では、時間をおいてから「思い出せそうか」を判断すると、どれを覚えていてどれを忘れているかの見分けがはっきり正確になりました(g = 0.93)。ほかの項目をひととおりやってから、または次の日に、答えを隠して確かめます。
単語カードは、1回正解したら外していいですか?
すぐには外さない方がよいと考えられます。自分で外せる条件にした実験では、多くの人が1回思い出せた単語を外し、後の成績が下がりました。533人の実験をもとに、その日のうちに3回正解し、その後、日をあけて3回覚え直すことが勧められています。
答えを見て「わかる」なら、覚えたことになりませんか?
なりません。答えが見えていると、問いだけを見たときより「覚えた」と感じやすいことが実験でわかっています。本番では答えは見えないので、確かめるときも答えを隠し、自分で言えるか書けるかで判断します。
出典
- Rhodes, M. G., & Tauber, S. K. (2011). The influence of delaying judgments of learning on metacognitive accuracy: A meta-analytic review. Psychological Bulletin, 137(1), 131-148. https://doi.org/10.1037/a0021705
- Koriat, A., & Bjork, R. A. (2005). Illusions of competence in monitoring one's knowledge during study. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 31(2), 187-194. https://doi.org/10.1037/0278-7393.31.2.187
- Koriat, A., & Bjork, R. A. (2006). Illusions of competence during study can be remedied by manipulations that enhance learners' sensitivity to retrieval conditions at test. Memory & Cognition, 34(5), 959-972. https://doi.org/10.3758/bf03193244
- Karpicke, J. D. (2009). Metacognitive control and strategy selection: Deciding to practice retrieval during learning. Journal of Experimental Psychology: General, 138(4), 469-486. https://doi.org/10.1037/a0017341
- Rawson, K. A., & Dunlosky, J. (2011). Optimizing schedules of retrieval practice for durable and efficient learning: How much is enough? Journal of Experimental Psychology: General, 140(3), 283-302. https://doi.org/10.1037/a0023956
- Kornell, N., & Bjork, R. A. (2008). Optimising self-regulated study: The benefits—and costs—of dropping flashcards. Memory, 16(2), 125-136. https://doi.org/10.1080/09658210701763899


