勉強会やグループで勉強しても、身についた気がしない。どう立て直す?「一緒に思い出す」研究と、先に一人で解く順番

勉強会では問題がすらすら解けたのに、家で一人になると思い出せない。仲間と話すのは楽しいけれど、身についている気がしない。そう感じても、勉強会そのものが悪いとは限りません。研究から見えてくるのは、「みんなで思い出す」ことと「一人で思い出せる」ことは別ものだということと、順番を変えれば勉強会を生かせるということです。
3行でわかる
- 140の研究(19,492人)をまとめた分析では、集団で一緒に思い出すと、同じ人数が一人ずつ思い出して合わせた量より少なくなっていた。初対面どうしで特に大きかった。
- 一方で、一緒に思い出す練習をした人は、後で一人で受けたテストで多く思い出せた実験がある。大学の授業では、グループで受けた試験は点が上がったが、次の試験で同じ内容を覚えている量は変わらなかった。
- 立て直しは、①最後に一人で確かめる ②集まる前に一人で思い出す ③最初は黙って各自で書く ④少人数で順番に話す ⑤出せなかった所に印をつける ⑥1週間後に比べて決める、の6つ。
01 悩みの正体勉強会の後、一人だと思い出せないのはなぜ?
勉強会での手応えは、メンバーの知識を合わせたものだからです。さらに、他の人が話す順番に引きずられると、自分なりの思い出し方が乱れ、思い出す量そのものが減りやすくなります。
勉強会で問題が解けたとき、その答えの一部は隣の人の頭から来ています。自分一人で出せたものと、人の発言で「そうだった」と思えたものは、その場では区別がつきません。
もう1つの理由は、研究で「協同抑制(一緒に思い出すと、かえって思い出す量が減る現象)」と呼ばれるものです。人はそれぞれ、自分なりの順番やまとまりで記憶をたどります。他の人が別の順番で話し出すと、その流れが乱れて、自分の思い出し方が使えなくなると考えられています[1]。
一緒に勉強すると続けやすくなるかは勉強仲間がいると続くのかで扱いました。この記事では、勉強会をしたのに身についていないと感じたとき、やり方をどう組み直すかに絞ります。
02 科学的にわかっていることグループで勉強すると、覚えにくくなる?
一緒に思い出している最中は、量が減りやすいことがくり返し確かめられています。ただし、その後に一人で思い出す量は増えることが多く、順番の工夫で減り方を抑えられた実験もあります。
MarionとThorley(2016)[1]
64の研究(75の効果量)をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。一緒に思い出すと量が減る現象は、しっかりした効果だった。減り方は、人数が多いとき、決まった順番なしに自由に話すとき、メンバーが知り合いでないときに大きかった。別の分析(27の効果量)では、一緒に思い出したことは、その後に一人で思い出すときに役立つ傾向があった。
対象: 主に研究室で単語などを覚えて思い出す実験 / 限界: 著者らは、後で役立つ理由の一部は「他の人の発言で覚えた内容にもう一度触れたこと」かもしれないとしている。
Luoら(2024)[2]
1996〜2023年の140の研究(185の効果量、計19,492人)をまとめたメタ分析。集団で一緒に思い出すと、同じ人数が一人ずつ思い出して合わせた量より少なかった(効果量d=0.54、中くらいの大きさ)。減り方は初対面どうしで最も大きく(d=0.75)、知り合いどうしがこれに続いた(d=0.45)。友人どうし、夫婦どうしでは、はっきりした差は出なかった。
対象: 中国語・英語などの研究 / 限界: 修士・博士論文15本を含む。友人・夫婦の研究は数が少なく、新しい研究ほど効果が小さくなる傾向もみられた。
Leightら(2012)[3]
アメリカの大学の生物学入門の授業で、学生を2つに分け、個人で試験を受けたあとグループでも受ける形と、個人だけの形を入れかえて比べた。グループで受けた試験の平均点は、個人の点より10ポイント以上高く、93.9%の学生が個人より高い点を取った。しかし次の試験で同じ内容を問う問題の正答数は、グループで受けた学生と個人で受けた学生で差がなかった。
対象: アメリカの大学1年生が中心(最終的に92人と104人のグループ) / 限界: 1つの授業での結果。グループ試験で記憶が良くなったという研究もあり、結果は研究によって分かれていると著者ら自身が書いている。
KnoppsとWissman(2023)[4]
48語の単語リストを覚えたあと、2人1組で一緒に思い出す練習をする人と、一人で練習する人に分けた実験。練習中に思い出せた数は2人組の方が少なかった。ところが、後で一人で受けた最終テストでは、2人組で練習した人の方が多く思い出せた(平均25語と20語)。2人組の方が、練習中に気がそれることも少なかった。
対象: アメリカの大学生96人(事前に計画を登録した実験) / 限界: 単語リストを使った1回の研究室の実験で、教科書の内容や社会人の勉強会で同じになるかは確かめられていない。
CongletonとRajaram(2011)[5]
覚える段階で、くり返し読むか、くり返し思い出すかを分けて比べた実験。先にくり返し思い出す練習をしておいた人どうしでは、一緒に思い出しても量が減らなかった。相手が思い出して自分が出せなかった内容からも学べて、その後の一人での成績が上がった。
対象: 研究室の実験(研究用に用意した材料を覚える) / 限界: 教科書の内容や実際の勉強会で確かめたものではない。著者らは、自分の中で記憶の「まとまり」が強くなったため、他の人の発言に乱されにくくなったと説明している。
Smithら(2009)[6]
大学の遺伝学の授業で、学生がまず一人で問題に答え、近くの学生と話し合い、もう一度答えた。そのあと、同じ考え方を使う別の問題に一人で答えた。話し合いは理解を深めていて、グループの誰も最初は正しい答えを知らなかった場合でも、そうなっていた。
対象: アメリカの大学の遺伝学の授業 / 限界: 1つの授業での結果で、長く覚えているかまでは測っていない。
まとめると、勉強会の弱点は「その場で一緒に思い出す」部分にあり、強みは「人の発言で抜けを知る」部分にあります。先に一人で思い出し、最後に一人で確かめる形にすると、弱点を小さくして強みを残せます。
紹介した研究の多くは、大学生が単語や授業の内容を覚える実験や授業です。資格や語学を学ぶ社会人の勉強会で同じ大きさの効果が出るかは、まだわかっていません。
| 身につきにくい勉強会 | 組み直した勉強会 | |
|---|---|---|
| 集まる前 | 何もしない・読んでくるだけ | 一人で一度思い出してくる[5] |
| 始め方 | いきなり話し合う | 黙って各自で書いてから見せ合う[6] |
| 話し方 | 大人数で思いついた人から | 2〜3人で順番に[1] |
| 終わり方 | 「わかった」で解散 | 一人で白紙に書き出して確かめる[3][4] |
03 今日からできる小さな一歩身につかない勉強会を、どう立て直す?
「一人で思い出す→みんなで比べる→一人で確かめる」の順番に組み直します。勉強会をやめるのではなく、最初と最後に一人の時間を足す形です。
まず、勉強会の効果を「一人で」測る
次の勉強会の終わりか翌日に、資料を閉じて、今日の内容を白紙に5分で書き出します。グループで解けた問題を、もう一度一人で解くのでもかまいません。グループでの点は上がっても、次の試験で覚えている量は変わらなかった授業[3]があるので、その場の手応えではなく、一人でできた量で判断します。
所要 5〜10分
集まる前に、一人で一度思い出してくる
範囲を読んでくるだけで終わらせず、勉強会の前日までに、何も見ずに要点を書き出すか、問題を数問解いておきます。先に思い出す練習をしておいた人どうしでは、一緒に思い出しても量が減らなかった実験[5]があります。
所要 10〜15分
集まったら、最初の5分は黙って各自で書く
問題や問いを出したら、話し合う前に、それぞれが自分の答えを紙に書きます。書き終わってから見せ合い、違う所を話し合います。一人で答えてから話し合う形は、誰も正解を知らなかった場合でも理解を深めていました[6]。
所要 5分
2〜3人の組で、順番に1つずつ言う
大人数で、思いついた人から次々に話す形は、思い出す量が減りやすい条件でした[1]。人数が多い会なら2〜3人の組に分け、「1人1つずつ順番に言う」と決めます。初対面の会ほど、最初にこのルールを共有しておくと進めやすくなります[2]。
所要 10〜20分
自分が出せなかった所に印をつけ、後で一人で思い出す
相手が言えて自分が言えなかった内容に、ノートで印をつけます。勉強会の価値の大きな部分は、この「抜けを知る」ことです[1][5]。その日の夜か翌日に、印の所だけを一人で思い出し直します。
所要 5〜10分
1週間後に、一人で書き出して比べる
組み直した勉強会の1週間後に、その回の内容を何も見ずに書き出します。手順1の量と比べて、増えていれば今の形を続けます。増えていなければ、勉強会は質問や励まし合いの場と割り切り、覚える作業は一人の時間に移します。
所要 10分
04 続けるためのコツ勉強会を「楽しいだけ」で終わらせないには?
役割を「思い出す」「教える」「確かめる」に分け、会の最後の5分は必ず一人の時間にします。楽しさや続けやすさは、勉強会の大事な良さとして残します。
- 会の終わりに「一人で書く5分」を固定する。毎回同じ時間に入れると、話し合いだけで終わるのを防げます。
- 人に説明する役を交代で回す。説明する側は、自分の抜けに気づきやすくなります。教えるつもりで学ぶ効果は教える効果(プロテジェ効果)の研究で扱いました。
- 勉強会は「覚える場」より「抜けを知る場」と考える。覚える作業そのものは、一人で思い出す練習の方が向いています。
- 手応えがないからといって、すぐ全部やめない。効く勉強ほど手応えが小さく感じられることがあります。確かめ方は勉強法を変えたのに手応えがないときにまとめました。
05よくある質問
勉強会やグループ学習は、やめた方がいい?
やめる必要はありません。集団で思い出している最中は量が減りやすい一方、その後に一人で思い出す量は、一人で練習した人より多かった実験があります。先に一人で解く、最後に一人で確かめる、の2つを入れれば、勉強会の良さを残せます。
グループで解くと点が上がるのに、身についていないのはなぜ?
その場の点は、メンバーの知識を合わせた点だからです。大学の生物の授業の実験では、グループで受けた試験の点は個人より10ポイント以上高かったのに、次の試験で同じ内容を問われたときの正答数は、個人で受けた学生と差がありませんでした。
初対面の人と勉強会をしても大丈夫?
大丈夫ですが、工夫は要ります。140の研究をまとめた分析では、一緒に思い出したときの落ち込みは、初対面どうしで最も大きく、友人や夫婦でははっきりしませんでした。初対面の会ほど、話す順番を決め、各自で書く時間を先にとると進めやすくなります。
オンラインの勉強会でも同じ?
オンラインで比べた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。ただ、「先に一人で書き出す」「順番に話す」「最後に一人で確かめる」は、画面越しでもそのまま使えます。カメラをつないで黙って各自で勉強する会は、思い出す練習とは別ものと考えてください。
出典
- Marion, S. B., & Thorley, C. (2016). A meta-analytic review of collaborative inhibition and postcollaborative memory: Testing the predictions of the retrieval strategy disruption hypothesis. Psychological Bulletin, 142(11), 1141–1164. https://doi.org/10.1037/bul0000071
- Luo, X., Zhao, B., Tang, W., Xiao, Q., & Liu, X. (2024). Meta-analysis of collaborative inhibition moderation by gender, membership, culture, and memory monitoring. Behavioral Sciences, 14(9), 763. https://doi.org/10.3390/bs14090763
- Leight, H., Saunders, C., Calkins, R., & Withers, M. (2012). Collaborative testing improves performance but not content retention in a large-enrollment introductory biology class. CBE—Life Sciences Education, 11(4), 392–401. https://doi.org/10.1187/cbe.12-04-0048
- Knopps, A. G., & Wissman, K. T. (2023). Collaborative retrieval practice reduces mind-wandering during learning. Experimental Psychology, 70(4), 241–248. https://doi.org/10.1027/1618-3169/a000589
- Congleton, A. R., & Rajaram, S. (2011). The influence of learning methods on collaboration: Prior repeated retrieval enhances retrieval organization, abolishes collaborative inhibition, and promotes post-collaborative memory. Journal of Experimental Psychology: General, 140(4), 535–551. https://doi.org/10.1037/a0024308
- Smith, M. K., Wood, W. B., Adams, W. K., Wieman, C., Knight, J. K., Guild, N., & Su, T. T. (2009). Why peer discussion improves student performance on in-class concept questions. Science, 323(5910), 122–124. https://doi.org/10.1126/science.1165919


