AIと独学

「暗記カードはAIに作らせても、自分で作るのと同じように覚えられる」は本当?自作カードと出来合いのカードの研究(効く・効かないの判定)

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机に並べた手書きの単語カード
Photo: Amoline2000 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

教科書の章をAIに読ませれば、数秒で暗記カードが何十枚もできあがります。「作る手間がはぶけて、覚える時間に回せるなら得だ」と考えるのは自然です。研究を調べると、判定は「条件しだい」でした。カードで答えを思い出す練習そのものは効きます。ただ、自分でカードを作った人の方が、出来合いのカードを使った人より2日後によく覚えていた実験がくり返し報告されています。AIに全部任せると、その「作る」分の上乗せを手放すことになります。

3行でわかる

  1. 判定:「条件しだい」。6つの実験で、自分で作ったカードは出来合いのカードより、48時間後のテストで用語をよく覚えていた(公開前の版の要旨で効果量 d = 0.45)。
  2. 自分で作った情報は、読んだだけの情報より覚えやすい(86研究のメタ分析で 0.40)。AIのカードをそのまま使うと、この上乗せを逃しやすい。
  3. ただし教科書の実際の内容では、カードを使っても自由に勉強したのと差が出なかった実験もある。AIには用語の候補を出してもらい、答えの面は自分の言葉で書くのが現実的。

01 通説の中身AIの暗記カードで、何が言われている?

「カードを作るのは準備にすぎず、覚えるのはめくる時間。だから作るのはAIに任せた方が効率がいい」という考え方です。

暗記カード(フラッシュカード)は、表に問い、裏に答えを書いて、答えを思い出してから裏返す道具です。AIを使えば、教材の文章から用語と意味のカードを一瞬で作れます。

ここで確かめたいのは2つです。出来合いのカード(AIが作ったものも含む)でも、思い出す練習の効果は得られるか。そして自分で作る作業そのものに、覚える効果があるかです。

02 科学的にわかっていること自分で作ったカードの方が覚えられる?

出来合いと自作をくらべた6つの実験では、自作の方がよく覚えていました。ただし実際の教科書を使った実験では、カードの効果自体が見えなかった例もあり、条件で変わります。

Panら(2023)[1]

説明文の用語と意味を、自分で作ったデジタルの暗記カードか、出来合いのカードで覚え、48時間後にテストした。6つの実験を通して、自作カードの方が用語の記憶がよく(効果量 d = 0.45、95%信頼区間 0.25〜0.66)、多くの実験で、覚えたことを新しい場面に当てはめる問題の成績もよかった(d = 0.29)。作り方の違いや、出来合いカードの質の違いも調べられている。

対象: 大学生を対象にした6つの実験 / 限界: 数値は公開前の版(プレプリント)の要旨による。短い文章を2日後にテストした実験で、何か月も続く独学ではない。

Linら(2018)[2]

実際の教科書の内容で暗記カードの効果を調べた。1つ目の実験では、カードで勉強しても、自由に勉強した場合より最後のテストの成績が有意に上がらなかった。2つ目の実験では、文章の構造をつかむのが苦手な学習者に限り、細かい事実ではなく考え方をたずねるカードの方が記述問題の成績がよかった。

対象: 学生(教科書の実際の内容を使用) / 限界: 著者らは、参加者が自由な勉強でもよいやり方をとっていたことと、教科書付属のカードでも自作のカードでも細かい事実のカードが多かったことを、差が出なかった理由に挙げている。

Bertschら(2007)・McCurdyら(2020)[3][4]

自分で作り出した情報は、読んだだけの情報より覚えやすい(生成効果)。86研究・445の効果量をまとめたメタ分析で、その大きさは 0.40 だった。310の実験をまとめた別のメタ分析では、どれだけ自由に作り出すか(答えがどれだけ決まっているか)で効果の大きさが変わった。

対象: 主に実験室での単語や文の記憶の研究 / 限界: 暗記カードの作成そのものを調べた研究ではない。

Rowland(2014)・Sigayretら(2026)[5][6]

テストで思い出す練習は、読み直すより記憶に残りやすい(テスト効果)。思い出して答えを書く形の方が、選択肢から選ぶ形より効果が大きかった。一方、オンラインで集めた参加者の2つの実験では、Panらの教材も使ったうえで、思い出す練習と読み直しの差が出なかった。

対象: メタ分析と、オンラインの実験2つ / 限界: Sigayretらは、効果そのものが無いのではなく、オンラインでは学習に深く取り組んでもらいにくいためと考えている。

Harderら(2026)[7]

ドイツの医学部で、教員が授業に合わせて228の薬について1,007枚のカードを作り、4学期にわたって学生に配った。使ったのは38.4%で、使った人の83.3%が役に立ったと答えたが、試験の点は使った人の方が低く、自己評価した成績を考えに入れると差は有意でなくなった。カード1枚を作るのに平均7分かかった。

対象: 医学部の学生(観察研究) / 限界: カードを使うかは学生が選んでおり、カードの効果そのものを比べた実験ではない。

AIが作ったカードと自分で作ったカードを、覚えた量でくらべた実験は、今回調べた範囲の査読論文では見つかりませんでした。AIのカードは「出来合いのカード」の一種と考えて、上の研究から判断しています。紹介した実験の多くは大学生が短い文章を数日以内に覚えたもので、仕事をしながら何か月も独学する場合とは条件が違います。

03 今日からできる小さな一歩AIを使いながら「作る効果」を残すには?

AIには「どの用語をカードにするか」の候補出しを頼み、答えの面は自分で書きます。書いてからAIの説明と照らし合わせ、違いを直します。

1

AIに「カードにすべき用語」だけを出してもらう

「この章で覚えるべき用語を10個、名前だけ挙げて。説明は書かないで」と頼みます。どこをカードにするか迷う時間を減らせます。

所要 2分

2

答えの面を、教材を見ながら自分の言葉で書く

教材の文をそのまま写さず、自分の言い方に変えます。言い換えられない用語は、まだ理解できていない用語です。

所要 1枚1〜2分

3

細かい事実だけでなく「なぜ・どう使う」のカードを混ぜる

「〇〇とは?」に加えて、「〇〇が起きるのはなぜ?」「〇〇はどんな場面で使う?」のカードを2〜3枚に1枚入れます。考え方をたずねるカードが記述問題に効いた結果[2]を当てはめたやり方です。

所要 5分

4

AIの説明と照らし合わせて、違いだけを直す

自分のカードとAIの説明を見比べ、抜けや誤りがあれば直します。AIの説明にも間違いが混じるので、迷ったら教材で確かめます。確かめ方は AIの答えの裏取り表 にまとめています。

所要 5分

5

めくるときは、答えを口か紙で出してから裏返す

「見ればわかる」で裏返さず、答えを言うか書いてから確かめます。思い出して答える形の方が効果が大きいからです[5]。使い方の基本は 暗記カードの効果的な使い方 にあります。

所要 1回10分

6

AIが作ったカードを使うなら、1枚ずつ書き直してから使う

時間がなくてAIのカードを使う日は、そのまま暗記せず、答えの面を自分の言葉に直すか、例を1つ足してから使います。作る作業の一部でも残すためです。

所要 1枚30秒

04 続けるためのコツ作る手間が負担で続かないときは?

全部を自作にこだわらないことです。苦手な章や試験に出やすい章だけ自作にし、残りはAIのカードを書き直して使うと、手間と効果のつり合いがとれます。

  • 自作は「答えの面だけ」でよい。用語の選び出しはAIに任せても、自分の言葉で書く部分が残れば作る作業になる。
  • 授業に合わせて丁寧に作られたカードでも、配っただけでは試験の点に差が見えなかった報告がある[7]。カードの出来より、どう使うかを大切にする。
  • AIに答えを任せてよい作業・任せない作業の分け方は AIに任せていい作業の仕分け表 を参考にする。
  • 自分で説明する方が身につく理由は 自分で説明するかAIに説明させるか でも扱っている。

05よくある質問

AIが作った暗記カードを使うのは、意味がない?

意味はあります。カードで答えを思い出す練習は、読み返すより記憶に残りやすいことが多くの研究で確かめられています。ただ、自分でカードを作った人の方が、出来合いのカードを使った人より2日後のテストの成績がよかった実験があります。AIのカードをそのまま使うと、その「作る」分の上乗せを逃しやすくなります。[1][5]

自分で作ると時間がかかる。それでも作るべき?

全部を自分で作る必要はありません。6つの実験では自作カードの方がよく覚えていましたが、教科書の実際の内容では、カードを使っても自由に勉強したのと差が出なかった実験もあります。AIに用語の候補だけ出してもらい、答えの面を自分で書くと、手間を抑えながら作る作業を残せます。[1][2]

AIが作ったカードを直接くらべた研究はある?

今回調べた範囲の査読論文では、AIが作ったカードと自分で作ったカードを、覚えた量でくらべた実験は見つかりませんでした。この記事の判定は、出来合いのカードと自作カードをくらべた研究と、「自分で作ると覚えやすい」研究をもとにしています。AIのカードには間違いが混じることもあるので、確かめてから使います。[1][3]

カードは、どんな書き方がいい?

用語と意味をそのまま写すより、自分の言葉で言い換え、例を1つ入れます。教科書の内容を使った実験では、細かい事実のカードが多く作られがちで、文章の構造をつかむのが苦手な学習者では、考え方をたずねるカードの方が記述問題の成績がよかったと報告されています。[2]

出典

  1. Pan, S. C., Zung, I., Imundo, M. N., Zhang, X., & Qiu, Y. (2023). User-generated digital flashcards yield better learning than premade flashcards. Journal of Applied Research in Memory and Cognition, 12(4), 574–588. https://doi.org/10.1037/mac0000083(数値は公開前の版の要旨による: https://doi.org/10.31234/osf.io/f5k8p)
  2. Lin, C., McDaniel, M. A., & Miyatsu, T. (2018). Effects of flashcards on learning authentic materials: The role of detailed versus conceptual flashcards and individual differences in structure-building ability. Journal of Applied Research in Memory and Cognition, 7(4), 529–539. https://doi.org/10.1016/j.jarmac.2018.05.003
  3. Bertsch, S., Pesta, B. J., Wiscott, R., & McDaniel, M. A. (2007). The generation effect: A meta-analytic review. Memory & Cognition, 35(2), 201–210. https://doi.org/10.3758/BF03193441
  4. McCurdy, M. P., Viechtbauer, W., Sklenar, A. M., Frankenstein, A. N., & Leshikar, E. D. (2020). Theories of the generation effect and the impact of generation constraint: A meta-analytic review. Psychonomic Bulletin & Review, 27(6), 1139–1165. https://doi.org/10.3758/s13423-020-01762-3
  5. Rowland, C. A. (2014). The effect of testing versus restudy on retention: A meta-analytic review of the testing effect. Psychological Bulletin, 140(6), 1432–1463. https://doi.org/10.1037/a0037559
  6. Sigayret, K., Parmentier, J.-F., & Silvestre, F. (2026). Testing the testing effect on Prolific: When retrieval practice fails to boost learning. Frontiers in Psychology, 17, 1727423. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1727423
  7. Harder, F., Barth, H., & Hafner, S. (2026). Institute-created electronic flashcards, associated development effort, and exam performance in pharmacology education in human medicine. Naunyn-Schmiedeberg's Archives of Pharmacology. https://doi.org/10.1007/s00210-026-05954-x