AIで勉強するときのチェック表(使う前・使っている間・使った後)。答えを写さずに力をつける9項目と記録表

AIに聞けば、わからない問題もすぐに解けます。でも、AIを閉じたあとに同じ問題を自分で解けるでしょうか。高校生約1000人の実験では、AIに答えを聞きながら練習した生徒は、AIなしの試験で、AIを使わなかった生徒より成績が低くなりました。この記事では、研究をもとに、AIを使う前・使っている間・使った後に確かめる9項目のチェック表と、1回1行の記録表を紹介します。
3行でわかる
- 答えを出すだけのAIで練習した高校生は、練習の成績は48%上がったのに、AIなしの試験では使わなかった生徒より17%低かった。ヒントだけ出すよう設定したAIでは、この悪影響はほぼ消えた。
- AIの答えはまちがうことがある。同じ実験でAIが正しく答えたのは平均51%。別の研究では、AIが挙げた文献の18〜55%が実在しなかった。
- チェック表の中心は「先に自分で考える」「ヒントだけ頼む」「最後にAIを閉じて1問解く」の3つ。結果を記録表に残す。
01 悩みの正体AIで勉強すると、なぜ自分で解けなくなることがある?
AIが答えまで出すと、自分で考えて答えを作り出す部分がなくなるためと考えられます。しかも本人は、力が落ちていることに気づきにくいとわかっています。
AIに聞けば、すぐに正しそうな答えと説明が返ってきます。読めば理解できた気がします。でも、問題を解く力は、自分で考えて答えを作り出すときに身につきます。
そこで、AIを使う前・使っている間・使った後に確かめることを、下の研究をもとに表にまとめました。
02 科学的にわかっていることAIを使った勉強で、力がつく使い方とつかない使い方は?
答えを写す使い方では、AIなしの試験の成績が下がりました。ヒントだけを出すAIでは、その悪影響がほぼ消えました。自分で答えを作り出すこと、思い出すテストをすることには、多くの研究で効果が確かめられています。
Bastaniら(2025)[1]
トルコの高校で、約1000人の数学の授業(90分を4回)を使った実験。ふつうのチャット型AI(GPT-4)を使えた生徒は練習問題の成績が48%、答えを言わずにヒントを出すよう先生と設定したAIを使えた生徒は127%上がった。ところが、AIなしの試験では、ふつうのAIを使った生徒は、AIを使わなかった生徒より17%低かった。ヒントを出すAIの生徒では、この悪影響はほぼ消えたが、成績が上がったわけでもなかった。
対象: 9〜11年生(日本の中3〜高2にあたる) / 限界: 数学の短い期間の実験。ふつうのAIの生徒は答えを求めて写すことが多く、本人たちは学びが減ったと感じていなかった。
Bastaniら(2025)[1]
同じ実験で、ふつうのAIが練習問題に正しく答えたのは平均51%だった。手順そのものの誤りが42%、計算の誤りが8%あった。
対象: 実験で使った高校数学の問題 / 限界: 2023〜2024年に使われたGPT-4での結果で、今のAIでも同じ割合とは限らない。
WaltersとWilder(2023)[2]
ChatGPTに42のテーマで短いレポートを書かせ、挙げられた636件の文献を1件ずつ調べた。実在しない文献は、GPT-3.5で55%、GPT-4で18%あった。実在する文献でも、著者名や年などに誤りがあったのは、GPT-3.5で43%、GPT-4で24%だった。
対象: 84本のAIが書いたレポート / 限界: 当時のモデルの結果で、新しいモデルでは割合が変わりうる。
Yangら(2021)[3]
教室で小テストを使う効果を調べた222研究(4万8478人)のメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。小テストで思い出す練習をすると、成績は中くらいの大きさで上がった(g=0.499)。正しい答えを示すフィードバックがあるかどうかなどで、効果の大きさが変わった。
対象: 実際の学校の授業 / 限界: AIを使った勉強そのものを調べた研究ではない。
Bertschら(2007)[4]
自分で答えを作り出す(生成する)と、ただ読むより覚えやすいかを調べた86研究、445の効果量のメタ分析。作り出した方がよく覚えていて、その差は効果量0.40だった。
対象: 記憶の実験 / 限界: 課題の種類などによって、効果の大きさがかなりちがった。
03 使える表AIで勉強するとき、何を確かめればいい?
表1の9項目を、使う前・使っている間・使った後に確かめます。勉強が終わったら、表2に1行だけ記録します。
表1 AIで勉強するときのチェック表。研究の結果を、独学向けにこのサイトがまとめたものです。時間や問題数は目安で、研究で決められた数字ではありません。
| いつ | 確かめること | もとになった研究 |
|---|---|---|
| 使う前 | 1 今日できるようになりたいことを1行で書いた(例 2次方程式の解の公式を自分で使える) | - |
| 使う前 | 2 AIを開く前に、自分で5分考えた・途中まで解いた | 自分で作り出すとよく覚えている[4] |
| 使う前 | 3 AIに「答えは言わずに、次の一歩のヒントだけ」と頼んだ | ヒントだけのAIでは悪影響がほぼ消えた[1] |
| 使っている間 | 4 AIの答えや解き方を、そのまま写していない | 答えを写した生徒はAIなしの試験で17%低かった[1] |
| 使っている間 | 5 AIの計算や手順を、自分でもう一度たどった | AIの正答は平均51%だった[1] |
| 使っている間 | 6 AIが挙げた数字・本・論文を、教科書や元の資料で確かめた | 実在しない文献が18〜55%あった[2] |
| 使った後 | 7 AIを閉じて、同じ種類の問題を1問、何も見ずに解いた | 思い出すテストで成績が上がる[3] |
| 使った後 | 8 7の答え合わせをして、まちがえた所を書き出した | 答えを示すと効果が変わる[3] |
| 使った後 | 9 表2に1行記録した | 本人は学びの減少に気づきにくい[1] |
表2 AI勉強の記録表(1回1行)。大事なのは「AIなしで解けたか」の列です。AIを使っている間の手ごたえではなく、AIを閉じた後の結果で判断します。
| 日付 | 単元 | AIに頼んだこと | 写さずにできたか | AIなしで解けたか | 次にやること |
|---|---|---|---|---|---|
| 例 10/14 | 例 2次方程式 | 例 3問目のヒント | 例 ○ | 例 △(符号をまちがえた) | 例 明日、同じ型を2問 |
表3 1週間後の見直し。表2を見て、当てはまる行を1つ選びます。
| 記録に出ていること | 次の1週間にすること |
|---|---|
| 「AIなしで解けたか」に×が多い | AIを開く前に自分で考える時間を長くし、AIにはヒントだけを頼む |
| 「写さずにできたか」に×が多い | AIの画面とノートを並べない。説明を読んだら画面を閉じてから書く |
| AIの説明と教科書が食いちがった | 教科書や公式の資料を優先し、AIには「どこがちがうか」を聞く |
| ○が続いている | AIなしで解く問題を1問から2問に増やす |
AIに練習問題を作らせる頼み方はAIに練習問題を作らせる記事に、すでに頼りすぎてしまったときの立て直し方はAIなしで解ける力を取り戻す記事にまとめています。
04 続けるためのコツチェック表を毎回使い続けるには?
9項目を全部守ろうとせず、まずは「先に自分で考える」「ヒントだけ頼む」「最後にAIを閉じて1問解く」の3つから始めます。
- 頼み方を決まり文句にしておく。「答えは言わずに、次の一歩のヒントだけください」をメモしておき、毎回はりつけます。
- AIを閉じる時間を決める。例えば勉強の最後の10分は、AIを閉じて解く時間にします。
- 手ごたえを信じすぎない。実験では、答えを写した生徒も、学びが減ったとは感じていませんでした。
ここで紹介したAIの実験は、高校数学の短い期間のものです。社会人の独学で、このチェック表がどれだけ役に立つかを直接確かめた研究はまだありません。表2の「AIなしで解けたか」の列で、自分の効き目を確かめながら使ってください。
05よくある質問
AIを使って勉強すると、力がつかないの?
使い方しだいです。答えを出すだけのAIで練習した高校生はAIなしの試験で成績が下がりましたが、答えを言わずにヒントを出すよう設定したAIでは、その悪影響はほぼ消えました。ただし、そのAIでも試験の成績がAIなしで練習した生徒より上がったわけではありません。
AIの説明が正しいかは、どう確かめればいい?
計算や手順は自分でもう一度たどり、数字や出典は教科書や元の資料で確かめます。高校数学の実験では、AIが正しく答えたのは平均51%でした。AIが挙げる論文や本は実在しないこともあるので、題名で検索して見つかるかを確かめます。
AIに頼んでよいのは、どんなこと?
自分で考えたあとのヒント、答え合わせ、練習問題づくりなどです。研究では、自分で答えを作り出したり、テストで思い出したりする方が、読むだけより身につきました。AIに答えを作ってもらう部分を減らし、自分で作り出す部分を残すのがコツです。
出典
- Bastani, H., Bastani, O., Sungu, A., Ge, H., Kabakcı, Ö., & Mariman, R. (2025). Generative AI without guardrails can harm learning: Evidence from high school mathematics. Proceedings of the National Academy of Sciences, 122(26), e2422633122. https://doi.org/10.1073/pnas.2422633122
- Walters, W. H., & Wilder, E. I. (2023). Fabrication and errors in the bibliographic citations generated by ChatGPT. Scientific Reports, 13, 14045. https://doi.org/10.1038/s41598-023-41032-5
- Yang, C., Luo, L., Vadillo, M. A., Yu, R., & Shanks, D. R. (2021). Testing (quizzing) boosts classroom learning: A systematic and meta-analytic review. Psychological Bulletin, 147(4), 399–435. https://doi.org/10.1037/bul0000309
- Bertsch, S., Pesta, B. J., Wiscott, R., & McDaniel, M. A. (2007). The generation effect: A meta-analytic review. Memory & Cognition, 35(2), 201–210. https://doi.org/10.3758/BF03193441


