勉強法

仕事で覚えたやり方が、テキストや試験の答えと違って混乱する。どう覚え直す?思い込みを書きかえる研究(反論つきの説明・自信のある誤り)

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木の机の上に置かれた1本の鉛筆
Photo: AaronNinetyTwo / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

資格の問題集を解いていて、「職場ではこうやっているのに、正解は違う」と手が止まる。何年も使ってきたやり方なので、テキストの答えがどうしても頭に入らない。社会人の学び直しでは、よくあるつまずきです。研究では、思い込みは「よくある思い込み→なぜ違うか→正しい答え」の形で書き直すと修正しやすく、自信をもって間違えた問題ほど、正しい答えを見たあとに直りやすいとわかっています。ただし時間がたつと元に戻ることもあるので、1週間後の解き直しまでを1セットにします。

3行でわかる

  1. 経験や知識が多い人でも、思い込みは残ります。教師242人の調査では、学びと脳についての誤った説を平均49%信じていました。
  2. 思い込みを名指しして「なぜ違うか」を説明する文章は、ふつうの説明より学びを助けました(33研究・3,869人のメタ分析で、効果量g=0.41)。
  3. 自信をもって間違えた答えは、正しい答えを見ると直りやすい一方、1週間後には元の誤りに戻ることがありました。訂正のあと、日をあけて解き直します。

01 悩みの正体仕事の経験があるのに、なぜテキストの答えが入らない?

仕事で身につけたやり方は、何度も使って「正しい」と確かめてきた知識だからです。新しい答えを読んでも、慣れた答えのほうが先に浮かび、正解とぶつかります。経験が多いことは、思い込みを防いでくれません。

社会人の学び直しでは、まっさらな状態から覚えることは少なく、すでに持っている知識の上に新しい知識を積みます。多くの場合、経験は助けになります。けれど、職場だけの慣習や、改正前の古いルールが混ざっていると、それが「正しい答え」として先に出てきてしまいます。

これは怠けや記憶力の問題ではありません。次の研究が示すように、その分野に熱心で知識の多い人でも、思い込みはふつうに残っています。

02 科学的にわかっていること思い込みを書きかえるには、どんな方法が効く?

思い込みを名指しして「なぜ違うか」を説明する形が、ふつうの説明より効果がありました。自信のある誤りは訂正で直りやすいものの、日がたつと戻ることもあります。誤りを書くと逆に強まるという心配は、研究ではほぼ支持されていません。

Dekkerら(2012)[1]

イギリスとオランダの小中学校の教師242人に、脳と学びについての32の文を見せた。そのうち15は誤った説(たとえば「好みの学習スタイルで教わるとよく学べる」)だった。教師たちは、誤った説を平均で49%信じていた。脳についての一般的な知識が多い人ほど、誤った説も多く信じていた。

対象: 脳と学びに関心のある教師242人(平均43歳)のオンライン調査 / 限界: 一時点の調査で、関心の高い教師に偏っている。原因と結果まではわからない。

SchroederとKucera(2022)[2]

「よくある誤解はこう。でも実際はこうで、理由はこう」と、誤解を名指しして打ち消す文章(反論つきの説明)の効果を、33研究・44の比較・3,869人分まとめたメタ分析。ふつうの説明文などとくらべて、学びの成績は中くらいの差で上回った(g=0.41)。学ぶ人の年齢や分野、テストの時期による差は見られず、1週間ほどあとのテストでも効果は保たれていた。

対象: 小学生から大学生・大人まで。理科と数学の内容が中心 / 限界: ほとんどが1回きりの短い文章(最長でも1,542語)。教科書のように長い教材や、くり返し読む場面でも同じかはわかっていない。

ButterfieldとMetcalfe(2001)、Metcalfe(2017)[3][6]

問題に答えて、その答えへの自信を評価し、正しい答えを見せたあとにもう一度テストした。研究者たちの予想に反して、強い自信をもって答えた誤りほど、再テストで正しく直っていた(「過修正効果」と呼ばれる)。Metcalfeのレビューは、間違えたあとに正しい答えと、なぜ間違えたかの説明を受けることが、学びに役立つとまとめている。

対象: 実験室で一般知識の問題に答えた参加者 / 限界: 短い実験の結果で、何年も仕事で使ってきたやり方に同じことが起きるかは確かめられていない。

Butlerら(2011)[4]

科学の一般知識の問題に答え、自信を評価し、正しい答えを見せた。半分の人はすぐに、残りの半分は1週間後に同じ問題を解き直した。過修正効果はどちらでも見られたが、1週間後は直っている割合が下がった。直らなかった問題では、最初と同じ誤りがまた出ることがあり、それは自信をもって答えた誤りほど起きやすかった。

対象: 科学の一般知識の問題を解いた参加者 / 限界: 論文の要旨で確認した。参加者の数と、直った割合の数値はこの記事では確認できていない。

Swire-Thompsonら(2020)[5]

「誤りを訂正すると、かえってその誤りを強く信じてしまう(バックファイア効果)」という説を調べた研究をまとめたレビュー。最近の研究では、起きやすい条件でも見つからないことが多く、著者らは、確かな現象とはいえないと結論した。誤りを訂正の中で書くことを避ける必要はなく、誤りは必ず訂正と並べて示し、訂正なしにくり返すのは避けるよう勧めている。

対象: 政治や健康などの誤情報と、その訂正を調べた研究 / 限界: 勉強の内容を直接扱った研究ではない。

実験室の結果は、主に大学生などが短い時間で一般知識の問題を解いたものです。何年も仕事で使ってきたやり方は、それより強く根づいている可能性があります。そのため、1回の訂正で終わらせず、日をあけて確かめる手順を入れています。

03 今日からできる小さな一歩仕事のやり方とテキストの答えがぶつかったら、どう覚え直す?

ぶつかった問題を1行ずつ集め、「思い込み→なぜ違う→正しい答え」の3行に書き直します。答えるときは自信も書き、1週間後に同じ問題を解き直して、元の答えに戻っていないか確かめます。

1

「職場ではこうだった」と思った問題に印をつける

問題集を解いていて、経験と正解が食い違ったら、問題番号の横に印をつけます。その場で深追いせず、まず集めます。

所要 1問あたり10秒

2

最新の公式情報で、どちらが正しいかを確かめる

法律や規格の改正で、教材か職場のどちらかが古いこともあります。試験を実施する団体の最新の情報で確かめ、試験で求められる答えをはっきりさせます。

所要 1件5分

3

3行メモに書き直す

「よくある思い込み:〜」「なぜ違うか:〜」「試験の答え:〜」の3行で書きます。思い込みを書くのをためらう必要はありません。必ず訂正とセットで書きます[2][5]。

所要 1件3分

4

答える前に自信を書く

解き直すときは、答えの横に「自信あり・なし」を書きます。自信ありで間違えた問題は、驚きとともに直りやすい一方、あとで戻りやすい問題でもあります。二重丸をつけて、次の確認の対象にします[3][4]。

所要 1問5秒

5

1週間後に、メモを見ずに解き直す

カレンダーに7日後の日付を書き、印をつけた問題だけを解き直します。元の答えが出てしまったら、3行メモを読み直して、さらに1週間後にもう一度解きます。

所要 10〜15分

04 続けるためのコツ職場のやり方を否定せずに、試験の答えを覚えるには?

職場のやり方を「間違い」と決めつけず、「試験ではこう答える」と場面を分けて覚えます。食い違いの一覧は、試験直前に見直すいちばん効率のよい教材になります。

  • 場面で分ける。職場の慣習には、それなりの理由があることも多いものです。ノートの左に「試験の答え」、右に「職場のやり方」と並べると、どちらも捨てずに使い分けられます。
  • 食い違い一覧を直前の見直しに使う。自信をもって間違えた問題は、試験本番で同じ誤りが出やすい問題でもあります。前日に読むなら、まずこの一覧からにします。
  • 経験は「理由づけ」に使う。「なぜ違うか」を書くとき、職場の具体的な場面を思い浮かべると、自分だけの説明になります。
  • 間違えたことを責めない。知識の多い人でも思い込みは残ります[1]。印が増えるのは、覚え直す場所が見つかったということです。

経験を学びに結びつける方法は「学び直しを仕事に生かすには」、慣れたやり方が新しい方法を邪魔する仕組みは「慣れたやり方が新しい学びを邪魔するのはなぜ?」で詳しく書いています。AIの答えで誤って覚えた場合は「AIの答えが間違っていたときの覚え直し方」も参考になります。

05よくある質問

仕事のやり方が正しくて、テキストのほうが古いこともありますか?

あります。法律や規格が改正されたのに、教材が追いついていないこともあります。どちらが正しいかは、試験を実施する団体が出している最新の情報で確かめます。そのうえで「試験ではこう答える」と「職場ではこうしている」を分けて書いておくと、混乱しにくくなります。

間違った思い込みをノートに書くと、かえって覚えてしまいませんか?

研究では、その心配はほとんど当たらないとされています。訂正のときに誤りを書いても、すぐ横に「なぜ違うか」と正しい答えが並んでいれば、誤りを強めることはまれでした。避けたいのは、訂正を添えずに誤りだけをくり返し目にすることです。

自信があった問題を間違えると落ち込みます。どう受け止めればいい?

自信をもって間違えた問題は、正しい答えを見たあとに直りやすいことがわかっています。驚いた分だけ記憶に残りやすいと考えられています。ただし時間がたつと元の答えに戻ることもあるので、1週間後に解き直して確かめます。

出典

  1. Dekker, S., Lee, N. C., Howard-Jones, P., & Jolles, J. (2012). Neuromyths in education: Prevalence and predictors of misconceptions among teachers. Frontiers in Psychology, 3, 429. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2012.00429
  2. Schroeder, N. L., & Kucera, A. C. (2022). Refutation text facilitates learning: A meta-analysis of between-subjects experiments. Educational Psychology Review, 34, 957–987. https://doi.org/10.1007/s10648-021-09656-z
  3. Butterfield, B., & Metcalfe, J. (2001). Errors committed with high confidence are hypercorrected. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 27(6), 1491–1494. https://doi.org/10.1037/0278-7393.27.6.1491
  4. Butler, A. C., Fazio, L. K., & Marsh, E. J. (2011). The hypercorrection effect persists over a week, but high-confidence errors return. Psychonomic Bulletin & Review, 18(6), 1238–1244. https://doi.org/10.3758/s13423-011-0173-y
  5. Swire-Thompson, B., DeGutis, J., & Lazer, D. (2020). Searching for the backfire effect: Measurement and design considerations. Journal of Applied Research in Memory and Cognition, 9(3), 286–299. https://doi.org/10.1016/j.jarmac.2020.06.006
  6. Metcalfe, J. (2017). Learning from errors. Annual Review of Psychology, 68, 465–489. https://doi.org/10.1146/annurev-psych-010416-044022