時間・計画

「英語をやる」「資格の勉強を進める」と決めても、手がつかないのはなぜ?大きな目標を「なぜ」で考えるか「どうやって」で考えるか(解釈レベル)の研究

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分かれ道の道しるべ
Photo: G W Beaumont / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「今年こそ英語をやる」「資格の勉強を進める」。そう決めたのに、気づけば何週間も手をつけていない。そんな経験はありませんか。目標が大きく、ぼんやりしているほど、始めるのは先になりやすいようです。研究では、物事を「なぜやるか」で考えるか、「どうやるか」で考えるかで、取りかかる時期が変わることが示されています。

3行でわかる

  1. 人は遠い先のことほど「なぜやるか」という大きな言葉で考え、近いことほど「どうやるか」という具体的な言葉で考えやすい。勉強なら「学校でよい成績をとる」と「教科書を読む」の違い。
  2. 3週間以内に返せばよい課題を出した実験では、具体的に考えるように促された人ほど、先延ばしせずに早く返した。課題の面白さや大切さ、難しさとは関係がなかった。
  3. ただし「なぜ」の大きな目標も、長く続けるためには役立つと考えられている。実験は少なく、勉強そのものを調べたものではない。

01 悩みの正体大きな目標を決めても、手がつかないのはなぜ?

「英語をやる」のような大きな目標は、「なぜやるか」の言葉で書かれていて、「今日なにをするか」が入っていません。研究では、物事を抽象的に考えるほど、それを遠い先のことと感じやすいとされています。

同じ「勉強」でも、言い表し方は何通りもあります。「キャリアのため」「英語力を上げる」は、なぜやるかを表す大きな言葉です。「単語帳の30〜40番を覚える」「問題集の2章を解く」は、どうやるかを表す具体的な言葉です。

心理学では、この違いを解釈レベル(物事をどのくらい大まかに、または細かくとらえるか)と呼びます。この考え方では、遠い先のことは大まかに、近いことは細かくとらえやすいとされます。そして逆向きの関係もあると考えられています。大まかにとらえたことは、「いつかやること」に感じやすいということです。

計画が倒れる理由には、時間を少なく見積もることもあります。それは勉強の計画が毎回倒れるのはなぜかにまとめています。この記事では、「始める日が来ない」ほうの理由を扱います。

02 科学的にわかっていること具体的に考えると、早く取りかかれる?

早く取りかかれたという実験があります。ただし、もとになった研究は1本の論文にまとまった数個の実験で、勉強を課題にしたものではありません。

TropeとLiberman(2010)[1]

遠い・近いの感じ方と、考え方の細かさについての研究をまとめた論文。紹介されている研究の一つでは、人は遠い先の「勉強」を「学校でよい成績をとる」のような大きな言葉で表し、近い勉強を「教科書を読む」のような具体的な言葉で表しやすかった。逆に、ある行動を「なぜ」の言葉で考えると、それを先のことと考えやすくなる、という研究もまとめている。

対象: これまでの多くの実験をまとめた論文 / 限界: 著者ら自身がこの理論を提唱した研究者で、新しい実験ではない。

McCreaら(2008)[2]

参加者に「3週間以内にメールで返してください」と質問紙を送った。質問紙の中身を変えて、物事を大まかに考えるように促す組と、具体的に考えるように促す組をつくった。いくつかのやり方で試したところ、具体的に考える組の人ほど、先延ばしせずに早く返した。この差は、課題を面白い・大切・難しいと感じたかどうかとは関係がなかった。

対象: 1本の論文にまとめられた複数の実験(参加者の内訳は要旨に書かれていない) / 限界: 課題は短い質問紙で、何か月も続く勉強ではない。この論文は要旨と、上の論文[1]による紹介で確かめた(本文は確認できていない)。同じ方法での追試は、今回の調査では見つけられなかった。

Bausenhartら(2024)[3]

「未来のこと=抽象的」という結びつきが本当にあるかを、別の研究者が確かめ直した。「未来」を表す言葉と抽象的な言葉を同じキーで答えるとき、反応は速くなり、結びつきは再現された。しかし「過去」を表す言葉では、この結びつきははっきりせず、未来より有意に弱かった。著者らは、未来には「どうなるかわからない」ところがあるためだと考えている。

対象: オンラインで参加した大人96人ずつ(2つの実験) / 限界: 言葉の分類の速さを測った実験で、行動や勉強の時期は測っていない。

Höchliら(2018)[4]

目標の研究をまとめた論文。具体的な目標は、とくに行動を始める段階でやる気を高める、という目標設定の研究を紹介している。一方で、「なぜやるか」の大きな目標は、長く続けること、誘惑に負けないこと、失敗から立ち直ることに役立つと論じ、両方を組み合わせるのがよいと結論している。

対象: これまでの研究をまとめた理論の論文 / 限界: 新しい実験ではない。大きな目標の利点や、組み合わせたときの効果はまだ研究が足りず、長い期間の研究が必要だと著者ら自身が述べている。

考え方例研究で言われている役わり
「なぜ」(大まか)英語力を上げる、キャリアのため長く続ける、誘惑や失敗に負けない[4]。ただし、先のことに感じやすい[1][2]
「どうやって」(具体的)単語帳の30〜40番、問題集の2章始める段階でのやる気を高める[4]。早く取りかかりやすい[2]

02 研究の限界この結果は、ふだんの勉強にもそのまま当てはまる?

そのままとは言えません。中心になる実験[2]は短い課題で、勉強を何か月も続ける場面は調べていません。理論をまとめた論文[1][4]の書き手は、理論を支持する立場の研究者です。

McCreaらの実験は、質問紙を返すまでの日数を見たものです。具体的に考えると早く取りかかれることは示しましたが、勉強の量や成績が上がるかは調べていません。

また、遠い・近いと抽象・具体の結びつきは、未来については別の研究者が再現しましたが、過去については弱いという結果でした[3]。この理論のすべての予測が、同じ強さで確かめられているわけではありません。

TropeとLiberman[1]、Bausenhartら[3]、Höchliら[4]は論文の本文で、McCreaら[2]は要旨と[1]の紹介で内容を確かめました。

03 今日からできる小さな一歩大きな目標を、どう「始められる形」にする?

大きな目標は消さずに残し、その下に「次の1回でやること」を具体的に書きます。教材・範囲・時間まで入れると、「いつかやること」から「今日やること」に変わります。

1

大きな目標を1行で書く

「英語で会議に出られるようになる」など、なぜやるかを1行にします。これは消さずに、ノートの一番上に残します[4]。

所要 2分

2

「どうやって?」を2回たずねる

「どうやって?」→「聞く練習をする」、「どうやって?」→「問題集のリスニング1回分を解く」のように、教材と範囲が出てくるまで細かくします。

所要 3分

3

次の1回の「始め方」を決める

「明日の夜、夕食のあとに、問題集のp.12を開く」のように、いつ・どこで・何を開くかまで書きます。いつ・どこでを決める方法はif-thenプランの記事にまとめています。

所要 2分

4

手が止まったら、もう一段だけ細かくする

数日たっても始められていなければ、行動がまだ大きすぎるサインと考えます。「1章を読む」を「最初の2ページを読む」にするなど、もう一段だけ細かくします。

所要 1分

04 続けるためのコツ具体的な予定だけで、勉強は続く?

具体的な予定は「始める」のに役立ちますが、続けるには「なぜやるか」も役立つと考えられています。両方を同じ紙に書いておき、迷ったら大きな目標を見直します。

05よくある質問

大きな目標は、持たないほうがいいのですか?

そうではありません。目標の研究をまとめた論文では、「なぜやるか」の大きな目標は、長く続けたり失敗から立ち直ったりするのに役立つと論じられています。始めるための具体的な行動と組み合わせるのがよい、というのが著者らの結論です。

具体的に考えると、本当に先延ばしが減りますか?

短い課題では減ったという実験があります。3週間以内に質問紙を返す課題で、具体的に考えるように促された人ほど早く返しました。ただし、長期間の勉強で同じことが起きるかは調べられていません。

どのくらい細かくすればいいですか?

研究で決まった基準はありません。目安は「教材・範囲・始める時間」が入っていて、次の1回ですぐ始められることです。それでも始められないときは、もう一段だけ小さくします。

出典

  1. Trope, Y., & Liberman, N. (2010). Construal-level theory of psychological distance. Psychological Review, 117(2), 440–463. https://doi.org/10.1037/a0018963
  2. McCrea, S. M., Liberman, N., Trope, Y., & Sherman, S. J. (2008). Construal level and procrastination. Psychological Science, 19(12), 1308–1314. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02240.x
  3. Bausenhart, K. M., Ulrich, R., & Kaup, B. (2024). Association between abstraction level and time: Are future and past more abstract than the present? Quarterly Journal of Experimental Psychology, 77(8), 1595–1609. https://doi.org/10.1177/17470218231217732
  4. Höchli, B., Brügger, A., & Messner, C. (2018). How focusing on superordinate goals motivates broad, long-term goal pursuit: A theoretical perspective. Frontiers in Psychology, 9, 1879. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2018.01879