資格も英語もと勉強の目標を増やしすぎて、どれも進まない。どう立て直す?目標の数と優先順位の研究でわかった5つの手順

資格の勉強を始めたら、英語もやりたくなった。プログラミングも気になって、教材が3つ4つと机に並んでいる。なのに1か月たっても、どれも最初の章から進んでいない。そんな状態は、意志が弱いせいではありません。研究では、目標の数が増えると、計画を立てること自体の効き方が変わると報告されています。立て直しは、目標を捨てることではなく、「今の主役」を1つ決めて、ほかを「休止中」と書いて預けることから始めます。
3行でわかる
- 「いつ・どこでやるか」を決める計画は、目標が1つなら達成を助ける。ところが目標が複数になると、計画を立てることで「全部は大変だ」と気づき、やる気がかえって下がることがあった(消費者行動の研究)。
- 目標どうしが時間を取り合う関係は、気持ちの落ち込みと結びつき、互いに助け合う関係は、取り組む量の多さと結びついていた。今の目標を「助け合う・取り合う」で分けると、絞り方が見えてくる。
- 立て直しは「全部書き出す→関係に印→主役を1つ決める→ほかは休止日と最小量を書く→時間を分ける」の5つ。主役以外は「同じだけやらなくていい」と自分に許すことが大切です。
01 悩みの正体勉強の目標を増やすと、なぜどれも進まない?
目標が増えると、時間と気力という同じ資源を取り合うからです。さらに、全部の予定を立てようとすると「これを全部やるのは無理だ」と気づき、どの目標へのやる気も下がりやすくなります。
社会人の独学では、使える時間が1日1〜2時間ということも珍しくありません。そこに3つの目標を入れると、1つあたりの時間は細切れになります。どれも少しずつしか進まないので、進んだ手ごたえも得にくくなります。
目標が並んでいると、1つに取り組んでいる間も、ほかの目標が頭の片すみに残ります。片づいていない目標は、関係のない作業中にも考えが浮かびやすいことがわかっています[5]。「英語をやっている間も、資格のことが気になる」という状態です。
02 科学的にわかっていること目標が多いと、計画の立て方はどう変わる?
1つの目標に効く「いつ・どこでやるか」の計画は、目標が多いと効きにくくなります。目標どうしが取り合う関係は気分の落ち込みと、助け合う関係は取り組みの多さと結びついていました。
DaltonとSpiller(2012)[1]
「いつ・どこで・どうやるか」を具体的に決める計画(実行意図)は、目標が1つのときは達成を助けることが知られている。ところがこの研究では、その効果はふつう、複数の目標には広がらなかった。計画を立てると、複数の目標を全部こなす難しさに目が向き、ほかの楽しい活動とくらべて目標への熱意が下がり、達成も下がった。一方で、複数の目標を「なんとかこなせるもの」として捉え直すと、難しさの感じ方が下がり、計画した作業をこなしやすくなった。
対象: 健康的な食事や片づけのような、日常の目標を扱った研究(論文の要旨で確認) / 限界: 勉強の目標そのものを調べた研究ではない。参加者の数や国、効果の大きさは、この記事では確認できていない。
RiedigerとFreund(2004)[2]
3つの研究で、人が持っている複数の目標の関係を調べた。時間などの資源が足りない、やり方がぶつかるといった「取り合う」関係は、心の健やかさ(ふだんの幸福感と、その時々の気分)の低さと結びついていた。一方で、片方を進めるともう片方も進む、やり方が重なるといった「助け合う」関係は、目標に取り組む量の多さと結びついていた。取り合いと助け合いは、1本の物差しの両端ではなく、別々の性質だった。
対象: 3つの研究(一時点の調査と短期間の追跡。質問紙・日記・行動の記録を組み合わせた) / 限界: 一時点か短い期間の調査で、関係があることは示せても、原因と結果まではわからない。
Shahら(2002)[3]
6つの研究で、本気で取り組んでいる目標を意識すると、ほかの目標が頭に浮かびにくくなることを示した(「目標の遮へい」と呼ばれる)。この働きは、その目標への本気度が高いほど強かった。ほかの目標が、今の目標を助けるものだと、押さえこみは弱まった。この働きは、目標の追求と達成に良い影響を持っていた。
対象: 6つの研究(論文の要旨で確認) / 限界: 短時間の実験で、何か月も続く独学で同じことが起きるかは確かめられていない。
FreundとTomasik(2021)[4]
スイス・チューリッヒの学生でない大人185人(18〜87歳)が、1つの画面に並んだ2つの課題(並べかえとことばのパズル)を、短い時間で「どちらも同じくらいよく」解くよう求められた。片方を優先して進めた人ほど、目標がぶつかる感じが強く、いやな気分が多く、自分でコントロールできている感じが低かった。2つ目の研究(117人)で「同じくらいよく解かなくてよい」とゆるめに伝えると、片方を優先しても、ぶつかる感じとは結びつかなくなった。
対象: 1つ目は185人、2つ目は117人の大人。3つ目は721人のオンライン調査 / 限界: 数分の課題での実験。著者らは、2つの課題が同じ画面に並んでいたため、ほかの課題が目に入り続けたことも影響した可能性を挙げている。時間の使い方で優先した場合は、ゆるい指示でもぶつかる感じが強かった。
MasicampoとBaumeister(2011)[5]
片づいていない目標は、関係のない読書中にも考えが割りこみ、ほかの作業の成績を下げた。ところが、その目標について「いつ・どうやるか」の具体的な計画を書くと、こうした割りこみは消えた。計画を実際に実行した人ほど、割りこみがなかった。
対象: 複数の実験(論文の要旨で確認) / 限界: 短時間の実験で、計画を立てたのは1つの目標についてだった。目標がいくつもある場合に同じように効くかは、[1]の結果もあり、わかっていない。
ここで紹介した研究は、日常の目標や実験室の短い課題を扱ったもので、何か月もかけて複数の資格を勉強する人を調べたものではありません。それでも「目標の数が増えると計画が効きにくい」「取り合う関係は負担になる」「1つに集中すると、ほかの目標は頭から下がる」という方向は、複数の研究でそろっています。
03 今日からできる小さな一歩目標を欲張りすぎた勉強は、どう立て直す?
目標をすべて書き出し、取り合う関係か助け合う関係かに印をつけます。今の期間の主役を1つ決め、ほかは「休止」か「最小量だけ続ける」と書きます。再開する日も書いておけば、頭から下ろせます。
今の勉強の目標を、全部書き出す
紙に「資格」「英語」「プログラミング」のように、気になっているものを全部書きます。それぞれの横に、締め切り(試験日など)があれば書きます。書き出すだけで、何と何が時間を取り合っているかが見えます。
所要 5分
目標どうしの関係に「助」と「取」の印をつける
片方を進めるともう片方も進むなら「助」です(例: 英語の資格と、英語の資料を読む仕事)。時間を取り合うだけなら「取」です。助け合う目標は取り組みの多さと、取り合う目標は気分の落ち込みと結びついていました[2]。「助」の組は、1つの目標としてまとめて扱えます。
所要 5分
次の1〜3か月の「主役」を1つだけ決める
締め切りが近いもの、仕事や生活にいちばん効くものを主役にします。決め手がなければ、いちばん「本気」のものにします。本気で取り組む目標ほど、ほかの目標が頭に浮かびにくくなりました[3]。
所要 5分
主役以外は「休止」か「最小量」と書き、再開日を決める
「英語: 休止。12月の試験が終わった週に再開」「プログラミング: 週1回15分だけ」のように書きます。そして「主役以外は、同じだけやらなくていい」と一言添えます。「どれも同じくらい」と求めるのをやめると、片方を優先してもぶつかる感じが出にくくなりました[4]。再開の予定を具体的に書くと、片づいていない目標が頭に割りこみにくくなります[5]。
所要 10分
目標ごとに、勉強する時間を分ける
同じ時間帯に2つの教材を並べず、「平日の夜は資格、日曜の朝だけ英語」のように分けます。勉強中は、主役でない教材を机から下ろします。2つの課題が同じ画面に並んでいると、ほかの課題が目に入り続けた可能性がある、と実験の著者らは書いています[4]。
所要 5分
目標の状態ごとの扱い方を表にしました。研究の結果を、独学の場面に当てはめたものです。
| 目標の状態 | 扱い方 |
|---|---|
| 締め切りが近い・いちばん本気 | 主役にする。「いつ・どこでやるか」はこの目標だけに決める[1][3] |
| 主役と助け合う | 主役と一緒に進める。同じ教材・同じ時間で両方に効くやり方を探す[2] |
| 主役と時間を取り合う | 休止にして、再開する日を書く[5] |
| やめると忘れそうで不安 | 週1回10〜15分だけの「最小量」で残す。主役と同じ量は求めない[4] |
04 続けるためのコツまた目標を増やしすぎないためには?
新しく学びたいことが出てきたら、すぐ始めずに「次にやるリスト」に書いて預けます。主役が終わったとき、または1〜3か月ごとの見直しの日に、そのリストから次の主役を選びます。
- 「次にやるリスト」を作る: 気になった教材や資格は、書いておけば消えません。今すぐ始めなくても、あきらめたことにはなりません。
- 見直しの日を決める: 「毎月1日に、主役を続けるか変えるかを決める」とカレンダーに入れます。崩れた計画の作り直し方は、勉強の計画が崩れたときの記事にまとめています。
- 先の予定ほど少なめに入れる: 来月の自分には時間がありそうに感じやすいことがわかっています。理由は予定を詰め込んでしまう理由の記事で解説しています。
- 勉強中に別の目標が浮かんだら書いて下ろす: 浮かんだ用事の扱い方は、勉強中にやることが浮かぶときの記事が参考になります。
- 主役の計画は1つだけ具体的に: 「いつ・どこでやるか」の決め方は、if-thenプランの記事にあります。
05よくある質問
資格と英語、同時に勉強するのは無理ですか?
無理とは言えません。2つが助け合う関係(例: 英語で資格の教材を読む)なら、一緒に進めやすいと考えられます。時間を取り合うだけの関係なら、どちらかを主役にして、もう片方は量を減らす方が続けやすくなります。目標どうしが取り合う関係は、気分の落ち込みと結びついていました。
休止した目標は、もう再開できなくなりませんか?
再開する日と最小量を書いておけば、あきらめたことにはなりません。片づいていない目標でも、いつどうやるかの具体的な計画を書くと、頭に割りこむ考えが消えたという実験があります。休止は「後回しの予約」と考えてください。
全部の目標に、細かい計画を立てた方がいいですか?
細かい計画は、まず主役の1つに絞るのがおすすめです。「いつ・どこでやるか」を決める計画は1つの目標には効きますが、目標が複数になると、全部の大変さに目が向いて熱意が下がることがありました。ほかの目標は、休止か最小量を書くだけで十分です。
出典
- Dalton, A. N., & Spiller, S. A. (2012). Too much of a good thing: The benefits of implementation intentions depend on the number of goals. Journal of Consumer Research, 39(3), 600–614. https://doi.org/10.1086/664500
- Riediger, M., & Freund, A. M. (2004). Interference and facilitation among personal goals: Differential associations with subjective well-being and persistent goal pursuit. Personality and Social Psychology Bulletin, 30(12), 1511–1523. https://doi.org/10.1177/0146167204271184
- Shah, J. Y., Friedman, R., & Kruglanski, A. W. (2002). Forgetting all else: On the antecedents and consequences of goal shielding. Journal of Personality and Social Psychology, 83(6), 1261–1280. https://doi.org/10.1037/0022-3514.83.6.1261
- Freund, A. M., & Tomasik, M. J. (2021). Managing conflicting goals through prioritization? The role of age and relative goal importance. PLoS ONE, 16(2), e0247047. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0247047
- Masicampo, E. J., & Baumeister, R. F. (2011). Consider it done! Plan making can eliminate the cognitive effects of unfulfilled goals. Journal of Personality and Social Psychology, 101(4), 667–683. https://doi.org/10.1037/a0024192


