時間・計画

勉強の目標は高く掲げるべきか、小さく刻むべきか。目標設定の研究

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Illuminated edges of paper (abstract photography)
Photo: Dietmar Rabich / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「今年こそ資格に合格する」と高い目標を立てたのに、数週間で手が止まってしまう。かといって目標を低くすると、やる気が出ない。研究の答えは「どちらか」ではなく「両方」です。ゴールは具体的で高めに置き、それを毎回の勉強で届く小さな区切りに分け、進み具合を記録する。この3つをそろえると、目標は達成に近づきやすくなります。

3行でわかる

  1. 具体的で高い目標は、「できるだけがんばる」よりも成果を高める。目標設定の研究で長く確かめられてきた結果。
  2. ただし遠いゴールだけでは効きにくい。毎回届く小さな区切り(近い目標)に分けた子どもは、学ぶ速さも意欲も伸びた。
  3. 進み具合を確かめて書き残すと、目標を達成しやすくなる。138件の実験をまとめた分析でも確認されている。

01「高い目標か、小さな目標か」は別々の話だった

目標の「高さ」と「近さ」は別のものです。高いゴールを持ちつつ、それを今日の分まで小さく刻むことはできます。研究は、この2つと「記録」を分けて調べてきました。

目標の話がこじれやすいのは、3つの性質がまざって語られるからです。

目標の性質意味研究の結論
高さどれだけ難しいか具体的で高い方が成果は上がりやすい
近さいつまでの目標か今日・今回の区切りがある方が続きやすい
記録進み具合を確かめるか確かめて書き残す方が達成しやすい

「高い目標は挫折する」と感じた経験があるなら、原因は高さではなく、近い区切りや記録がなかったことかもしれません。

02科学的にわかっていること

具体的で高い目標は成果を高めます。遠いゴールは近い区切りに分けると効き、進み具合の記録は達成を後押しします。目標設定は小さいながら確かな効果がある方法です。

Locke と Latham(2002)[1]

目標が難しいほど、努力と成果は高くなった。具体的で難しい目標は、「ベストを尽くせ」と言われるより一貫して成果が高かった。過去のメタ分析での効果の大きさ(d)は、難しさで0.52〜0.82、「ベストを尽くせ」との比較で0.42〜0.80。

対象: 100種類を大きく超える課題、4万人以上、少なくとも8か国の研究のまとめ(職場・実験室など) / 限界: 新しく複雑な技能を学ぶ段階では、成果の目標がかえって学習を妨げた研究もある。そのときは「解き方を身につける」という学習の目標の方が良かった。

Bandura と Schunk(1981)[2]

引き算が苦手な子どもが、42ページの教材に自分のペースで取り組んだ。「1回6ページ」という近い目標を勧められた組は、1課を平均21分で終えた。「最後までに全42ページ」という遠い目標の組は29分、目標なしの組は30分。遠い目標は、目標なしと成績が変わらなかった。

対象: 7〜10歳の子ども40人 / 限界: 子どもの算数の、短期間の実験。大人の独学で同じ大きさの差が出るとは限らない。

同じ実験で、あとで自由に過ごせる時間に自分から引き算の問題を解いたのは、近い目標の組で90%。ほかの組は約40%でした[2]。小さな区切りを達成し続けると、苦手だった科目への興味も育ちました。

Harkinら(2016)[3]

進み具合を確かめる回数を増やす工夫は、目標の達成を後押しした(効果の大きさ d=0.40)。結果を書き残したときや、人に報告・公開したときに効果はより大きかった。

対象: 138件のランダム化実験、合計1万9951人のメタ分析 / 限界: 勉強に限らず、さまざまな目標を扱った研究のまとめ。

Eptonら(2017)[4]

目標を立てること自体に、行動を変える小さな効果があった(d=0.34)。目標が難しいとき、人に宣言したとき、グループの目標のときに、特に効果が大きかった。

対象: 141本の論文から384の効果量、合計1万6523人のメタ分析 / 限界: 勉強に限らない、さまざまな行動を対象にした研究のまとめ。

4つの研究の多くは、職場や子どもの算数、生活習慣など、勉強以外の場面も含みます。社会人が何か月もかけて独学する場面で、同じ大きさの効果が出るかはまだ確かめられていません。

03今日からできる小さな一歩

まず、ゴールを数字で書きます。次に、それを1回の勉強で届く量まで割ります。最後に、終わったら進んだ量を1行記録します。3つ合わせても15分ほどです。

1

ゴールを「数字」で書く

「英語をがんばる」ではなく「12月までに単語帳を1冊終える」のように、何をどこまでやるかを書きます。少し背伸びが必要なくらいの高さで構いません。

所要 5分

2

1回の勉強で届く区切りに割る

ゴールを残りの日数で割り、「今日は10ページ」のような近い目標にします。初めての分野なら「例題の解き方を2つ説明できる」など、身につけることを目標にします。

所要 5分

3

終わったら1行だけ記録する

日付と進んだ量を、手帳やメモアプリに書きます。頭の中で確かめるだけより、書き残す方が効果が大きいと報告されています。

所要 1分

04続けるためのコツ

区切りが大きすぎると感じたら、ゴールは下げずに区切りだけ小さくします。記録は責める材料ではなく、次の計画を立てる材料として使いましょう。

  • 区切りに届かない日が続いたら、1回の量を減らす。ゴールの高さはそのままでよい。
  • 1日の区切りの量は、自分の過去の実績から決める。見積もりが甘くなる理由は計画錯誤の記事で紹介しています。
  • 「いつ・どこでやるか」も決めておくと、区切りに手をつけやすくなる。if-thenプランの記事もあわせてどうぞ。
  • 勉強仲間や家族に週の目標を伝える。人に報告すると、記録の効果は大きくなりました。

05よくある質問

高い目標を立てると、挫折しやすくなりませんか?

高い目標そのものより、遠いゴールしかない状態が問題になりやすいです。Bandura と Schunk(1981)の研究では、最終ゴールだけを示された子どもは、目標なしの子どもと成績が変わりませんでした。高いゴールは、毎回届く小さな区切りとセットにしましょう。

「がんばる」「できるだけやる」という目標ではだめですか?

Locke と Latham(2002)のまとめでは、具体的で難しい目標は「ベストを尽くせ」と言われるよりも一貫して成果が高くなりました。「できるだけ」は基準があいまいで、少しで満足しやすいためです。「今日は問題集を6ページ」のように数字を入れましょう。

勉強の記録はつけた方がいいですか?

つけた方が目標に近づきやすくなります。138件の実験をまとめたHarkinら(2016)の分析では、進み具合を確かめる回数を増やす工夫が目標達成を後押ししました。頭の中で確かめるより、紙やアプリに書き残す方が効果は大きくなりました。

勉強法の早見表で「高い目標を小さな区切りに分け、進み具合を記録する」の判定を見る
ほかの勉強法も30種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。

出典

  1. Locke, E. A., & Latham, G. P. (2002). Building a practically useful theory of goal setting and task motivation: A 35-year odyssey. American Psychologist, 57(9), 705–717. https://doi.org/10.1037/0003-066X.57.9.705
  2. Bandura, A., & Schunk, D. H. (1981). Cultivating competence, self-efficacy, and intrinsic interest through proximal self-motivation. Journal of Personality and Social Psychology, 41(3), 586–598. https://doi.org/10.1037/0022-3514.41.3.586
  3. Harkin, B., Webb, T. L., Chang, B. P. I., Prestwich, A., Conner, M., Kellar, I., Benn, Y., & Sheeran, P. (2016). Does monitoring goal progress promote goal attainment? A meta-analysis of the experimental evidence. Psychological Bulletin, 142(2), 198–229. https://doi.org/10.1037/bul0000025
  4. Epton, T., Currie, S., & Armitage, C. J. (2017). Unique effects of setting goals on behavior change: Systematic review and meta-analysis. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 85(12), 1182–1198. https://doi.org/10.1037/ccp0000260