記憶・覚え方

英語が速すぎて聞き取れないと感じるのはなぜ?外国語は実際より速く聞こえる「早口の錯覚」と、単語の区切りの研究

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古いラジオ
Photo: Uri Tours / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

英語の音声を聞くと、話している人がとても早口に感じる。「もっとゆっくり話してくれれば聞き取れるのに」と思った人は多いはずです。実は、同じ速さで話された音声でも、知らない言語ほど速く聞こえやすいことが、いくつかの実験で示されています。速く感じる理由の一部は、話す速さではなく、聞く側の「単語の切れ目を見つける力」にあると考えられています。

3行でわかる

  1. 17言語・170人の音読を調べた研究では、1秒に話す音節の数は言語で違ったが、1秒に伝わる情報の量はどの言語もおよそ同じ(約39ビット)だった。
  2. 同じ録音を聞いても、その言語を母語としない人のほうが「速い」と答えやすかった。その言語を理解できる人ほど、この錯覚は小さかった。
  3. 知らない言語では、続けて話された音から単語の切れ目を見つけるのが遅れる。これが「速く聞こえる」理由の有力な候補だが、まだ確かめ切れてはいない。

01 悩みの正体英語は、日本語より本当に速く話されている?

言語によって1秒あたりの音節の数は違います。ただ、音節が多い言語は1音節あたりの情報が少なく、1秒あたりに伝わる情報の量は言語どうしでおよそそろっていました。

Coupéら(2019)は、9つの語族にまたがる17言語について、母語の話し手あわせて170人の音読を録音しました。日本語と英語も、この17言語に入っています。同じ内容の短い文章15本を、ふだんの速さで読んでもらっています[1]。

話す速さは平均で1秒に6.63音節でした。人ごとの平均は、1秒に約4.3音節から約9.1音節まで、2倍ほどの開きがありました。一方で、1音節に詰まっている情報の量も言語によって違い、音節が速い言語ほど1音節あたりの情報は少ない傾向がありました[1]。

約39ビット/秒

17言語の、1秒あたりに伝わる情報の量の平均[1]。著者らは、言語は「速く・薄く」か「遅く・濃く」のどちらかに寄り、伝わる情報の速さはおよそそろう、とまとめています。

つまり「英語は特別に早口な言語だ」とは言えません。それでも速く感じるのは、聞く側の頭の中で起きていることが関わっていそうです。

02 科学的にわかっていること同じ速さでも、外国語は速く聞こえる?

同じ録音でも、その言語を母語としない人のほうが速いと評価しやすいという実験があります。ただし、逆の結果が出た組み合わせもあり、いつも起きるとは言えません。

SchwabとGrosjean(2004)[2]

フランス語の短い話を、さまざまな速さで読んだ録音を聞いてもらった。フランス語を母語とする96人より、スイスのドイツ語話者96人のほうが、平均して話す速さを「速い」と答えた。フランス語の理解テストの点が高い人ほど、速く感じる度合いは小さかった。

対象: フランス語の母語話者96人と、スイスのドイツ語話者96人 / 限界: 論文の内容は、BoskerとReinisch(2017)の論文の中の紹介で確かめた。話す速さを本人が評価する方法で、感じ方を答えてもらった研究。

BoskerとReinisch(2017)[3]

オランダ語とドイツ語を話せる1人に同じ内容の文を両方の言語で読んでもらい、速さをそろえて聞かせた。ドイツ語を母語とする人は、オランダ語の文を、速さをそろえたドイツ語の文より速いものとして処理していた。速さを直接点数で答える実験でも、オランダ語のほうを速いと評価した。オランダ語がわかる人ほど、この差は小さかった。

対象: 3つの実験で、オランダ語の母語話者とドイツ語の母語話者を各20〜27人ずつ / 限界: オランダ語の母語話者では、予想と逆の結果が出たり、差が出なかったりした。著者らはその理由を説明できていないと書いている。

BoskerとReinischの論文は、日本語にかかわる学会発表も紹介しています。日本語の話し手はドイツ語の速さを7.5%、ドイツ語の話し手は日本語の速さを9.1%、実際より速く見積もったという報告です[3]。ただしこれは査読論文ではなく学会の発表で、英語を聞く日本人を調べたものでもありません。

Snijdersら(2007)[4]

オランダ語の母語話者と、オランダ語を知らない英語の母語話者の脳波を比べた。単語を1つずつ聞く場合は、どちらも同じ単語のくり返しに気づけた。ところが続けて話された文の中では、オランダ語を知らない人は単語のくり返しに気づくのが遅れたり、気づけなかったりした。

対象: オランダ語の母語話者と、オランダ語を学んでいない英語の母語話者 / 限界: 論文の要旨で確認。学習中の人ではなく、その言語をまったく知らない人を調べた研究。

わかっていることどのくらい確か?
1秒に伝わる情報の量は、言語どうしでおよそ同じ17言語の測定で確認。音読の録音で、ふだんの会話ではない[1]
外国語は、同じ速さでも速く感じやすい複数の実験で報告。ただし逆の結果が出た組み合わせもある[2][3]
その言語がわかる人ほど、速く感じにくい2つの研究で同じ向きの結果。相関で、理由までは決められない[2][3]
単語の切れ目を見つけにくいことが原因有力な説明の1つ。直接確かめた研究はまだ少ない[3][4]

02 研究の限界英語を勉強中の日本人にも当てはまる?

そのまま当てはまるとはまだ言えません。調べられたのは主にヨーロッパの言語どうしで、英語を学ぶ日本人を対象にした査読論文は、今回の調査では見つかりませんでした。

ここで紹介した研究は、フランス語・ドイツ語・オランダ語など、ヨーロッパの言語の組み合わせが中心です。日本語と英語は音のリズムがもっと違うので、同じ大きさの錯覚が起きるかはわかりません。

また「理解できる人ほど速く感じにくい」という結果は、相関(いっしょに変わる関係)です。勉強すれば錯覚が小さくなると、実験で確かめたわけではありません。

Coupéら・BoskerとReinischは論文の本文で、Snijdersらは論文の要旨で内容を確かめました。SchwabとGrosjeanの結果は、BoskerとReinischの論文の中の紹介で確かめています。実験は短い文や文章を聞く課題で、実際の会話や動画を聞く場面とは違います。

03 今日からできる小さな一歩英語が速く聞こえるとき、何から試せばいい?

「相手が速すぎる」と決めつける前に、どこで単語の切れ目を見失ったかを確かめます。文字で確かめてから同じ音声を聞き直すと、自分がどこでつまずくかが見えてきます。

1

速いと感じた10〜20秒を1つ選ぶ

長い音声を全部聞き直すのではなく、特に速く感じたところだけを区切ります。まず2回、文字を見ずに聞きます。

所要 2分

2

文字(スクリプトや字幕)で、単語の切れ目を確かめる

聞こえた音と、実際の単語の区切りがどうずれていたかを見ます。知っている単語なのに聞き取れなかったなら、音のくずれが原因かもしれません。その理由は知っている単語なのに聞き取れないのはなぜ?にまとめています。

所要 3分

3

文字を閉じて、もう一度聞く

切れ目を知った後に聞くと、同じ音声でも遅く感じることがあります。そう感じたら、速さより「区切れなかった」ことがつまずきだったと考えられます。

所要 2分

4

数日後に、同じ音声を文字なしで聞く

間をあけて聞き直し、今度は区切れるかを確かめます。区切れなかった所だけ、手順2に戻ります。字幕の使い分けは英語の動画で勉強するとき、字幕はどうする?を参考にしてください。

所要 3分

04 続けるためのコツ「速くて無理」と落ち込みそうなときは?

外国語が速く聞こえるのは、学習者によくある感じ方で、耳や才能の問題とは限りません。速さそのものより、聞き取れる単語と区切れる場所を少しずつ増やすことに目を向けます。

  • 「速い」を「どこで区切れなかったか」に言い換える。感じた速さは、聞く側の処理のしやすさで変わることがあります[3]。メモには「速い」ではなく「〇〇の所で区切れなかった」と書きます。
  • ゆっくりした音声だけに頼りすぎない。今回の研究は、音声を遅くすると上達が速くなるかを調べたものではありません。遅い音声は確かめ用にとどめ、ふつうの速さの音声にも戻ります。
  • 挫折しかけたら、立て直しの手順を使う。聞き取れずに嫌になってきたときは英語のリスニングが聞き取れず、挫折しそうなときの手順が使えます。

05よくある質問

英語のネイティブは、日本人より早口なのですか?

言語ごとの比較では、1秒に話す音節の数は言語によって違いますが、1秒に伝わる情報の量はおよそそろっていました。17言語の音読を調べた研究では平均約39ビット/秒でした。英語が特別に早口な言語とは言えず、速く感じる理由の一部は聞く側にあると考えられます。

外国語が速く聞こえるのはなぜですか?

有力な説明は、知らない言語では続けて話された音から単語の切れ目を見つけにくいことです。オランダ語を知らない人は、文の中の単語のくり返しに気づくのが遅れたという脳波の研究があります。ただし、これが速く聞こえる原因だと直接確かめた研究はまだ少ないです。

英語が上達すれば、速く感じなくなりますか?

フランス語やオランダ語の実験では、その言語を理解できる人ほど速く感じる度合いが小さいという結果でした。ただしこれは相関で、勉強すると錯覚が小さくなることを実験で確かめたわけではありません。英語を学ぶ日本人を対象にした研究も、今回の調査では見つかりませんでした。

出典

  1. Coupé, C., Oh, Y. M., Dediu, D., & Pellegrino, F. (2019). Different languages, similar encoding efficiency: Comparable information rates across the human communicative niche. Science Advances, 5(9), eaaw2594. https://doi.org/10.1126/sciadv.aaw2594
  2. Schwab, S., & Grosjean, F. (2004). La perception du débit en langue seconde. Phonetica, 61(2–3), 84–94. https://doi.org/10.1159/000082558
  3. Bosker, H. R., & Reinisch, E. (2017). Foreign languages sound fast: Evidence from implicit rate normalization. Frontiers in Psychology, 8, 1063. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2017.01063
  4. Snijders, T. M., Kooijman, V., Cutler, A., & Hagoort, P. (2007). Neurophysiological evidence of delayed segmentation in a foreign language. Brain Research, 1178, 106–113. https://doi.org/10.1016/j.brainres.2007.07.080