勉強を続けると、だんだん集中が切れてくるのはなぜ?「集中は15分」説と、時間とともに注意が落ちる研究

勉強を始めたときは集中できていたのに、30分もすると字が目に入らなくなる。これは意志の弱さではなく、同じ作業を続けると誰にでも起こる「時間とともに注意が落ちる」現象です。研究では、頭の「エネルギー切れ」より、考えがほかへそれていくことと「続ける割に合うか」の見積もりで説明する考え方が有力です。
3行でわかる
- 40分の講義動画を見た大学生21人では、集中の自己評価が7点満点で6.0から4.9へ下がり、後半の内容ほど覚えていなかった。
- 「集中は10〜15分が限界」という話は、元になった直接のデータが乏しいと、講義の研究をまとめたレビューが指摘している。
- 「意志の力が使い切られる」という説明は、23と36の研究室による大規模な再現実験で、効果がほぼ0だった。
01 悩みの正体人の集中は「15分しか続かない」のは本当?
「集中は10〜15分が限界」という決まった時間は、研究で確かめられていません。ただ、同じ作業を続けると集中がだんだん落ちること自体は、くり返し見られています。
「人の集中は8秒」「15分が限界」といった話はよく聞きます。講義の長さを15分に区切った大学もあるほどです。
Bradbury(2016)は、講義中の集中の研究をまとめ直しました[1]。その結果、「10〜15分で集中が落ちる」の根拠として最もよく引かれる文献は、学生の集中をほとんど扱っていませんでした。集中を測った研究も、測り方に問題があるものが多く、10〜15分という限界は直接のデータでは支持されないと結論しています。
同じレビューでは、集中の差を一番大きく生んでいたのは講義の形式ではなく、教える人の違いでした。つまり「何分か」より「何を、どう続けているか」で集中は変わります。
02 科学的にわかっていること時間がたつと集中が落ちるのはなぜ?
同じ作業を続けると、考えが作業の外へそれやすくなり、それを引き戻す力も弱まります。さらに脳は「このまま続ける価値」を見積もり直していると考えられています。
Farleyら(2013)[2]
大学生21人が40分の心理学の講義動画を見て、5分ごとに「動画に集中できていたか」を7点満点でつけました。平均は最初の5分の6.0から、最後の5分の4.9まで下がりました。集中していた区間ほど内容を覚えており、講義の後半の内容は前半より覚えていませんでした。
対象: カナダの大学の学生21人 / 限界: 人数が少なく、講義は1本だけ。笑い話が入った区間だけ覚えている割合が高く、中身の面白さでも結果が変わることを著者自身が述べている。
Warmら(2008)[3]
画面の変化を見張り続ける課題では、時間とともに見落としが増えます(注意の持続の低下)。研究をまとめると、この課題は「退屈で楽な作業」ではなく、主観的にも脳の測定でも負担の大きい作業でした。課題のあとには取り組む気持ちが下がってつらさが増え、課題が難しいほどその変化は大きくなっていました。
対象: 見張り作業(監視課題)の実験のレビュー / 限界: 勉強そのものではなく、単調な監視作業での結果。
Thomsonら(2015)[4]
集中が時間とともに落ちる理由を、2つの説を組み合わせて説明しました。注意はもともと自分の考え(よそごと)に流れやすく、作業を続けるうちにそれを抑える力が弱まって、作業に向く注意が減っていく、という考え方です。どちらか1つの説だけでは、これまでの結果を説明しきれないとしています。
対象: 注意の持続と、考えがそれる現象(マインドワンダリング)の研究の整理 / 限界: 新しい理論の提案で、検証はこれから。
Kurzbanら(2013)[5]
頭を使う作業がつらくなるのは、体のエネルギーが減るからではなく、「今これに頭を使うと、ほかのことに使えない」という損の見積もりが「疲れた」という感覚になっている、という説を出しました。その感覚が、作業に向ける力を減らすと考えます。
対象: 心理学と脳科学の研究の整理 / 限界: 理論の提案で、ほかの説と見分ける実験はまだ少ない。
Haggerら(2016)、Vohsら(2021)[6][7]
「自制心は使うと減る(意志の力が使い切られる)」という有名な説を、事前に手順を決めて大規模に確かめ直しました。23の研究室・2,141人では効果の大きさがd=0.04で、0と区別できませんでした。別の36の研究室・3,531人でもd=0.06で、統計的に意味のある差はありませんでした。
対象: 多くの国の研究室で行った再現実験 / 限界: 最初の課題と次の課題を続けて行う実験方法での結果で、長時間の勉強の疲れそのものを測ったものではない。
3つの説明を並べると、次のようになります。
| 説明 | 中身 | 研究での扱い |
|---|---|---|
| エネルギー切れ | 集中に使う力が減って、続かなくなる | 「意志の力が減る」実験は大規模な再現で効果がほぼ0[6][7] |
| 考えがそれる | よそごとに注意が流れ、引き戻す力が弱まる | 講義で集中が下がるほど覚えていない結果あり[2]。理論は検証中[4] |
| 割に合わない | 続ける損の見積もりが「疲れた」と感じさせる | 理論の提案の段階[5] |
ここまでの研究は、大学生が1回だけ講義動画を見る実験や、実験室の単調な作業が中心です。社会人が仕事のあとに自分で選んだ教材で勉強する場合に、同じ速さで集中が落ちるとは限りません。
03 今日からできる小さな一歩集中が落ちてきたら、何をすればいい?
集中を「根性で保つ」より、作業の中身を途中で切り替えるのが研究に合ったやり方です。講義動画の区切りごとに小テストを入れた実験では、考えがそれる割合が半分以下になりました。
Szpunarら(2013)の実験では、大学生48人が21分の統計学の講義動画を4つに区切って見ました[8]。区切りごとに小テストを受けた人は、途中の問いかけで「ほかのことを考えていた」と答えた割合が19%でした。区切りで見直しをした人は39%、何もしなかった人は41%でした。小テストを受けた人は、ノートを取った量も多くなっていました。
20分ほどで「思い出す」を1回はさむ
教材を閉じて、今読んだところを3行で書き出します。読むだけの時間が長く続くのを止めます。
所要 2〜3分
集中を5分ごとに1〜7点でメモする
Farleyらの実験と同じつけ方です。点が下がり始める時間がわかれば、そこを区切りの目安にできます。
所要 1回数秒
下がったら、やることを変える
読む→問題を解く→声に出して説明する、のように作業を変えます。同じ作業を続けるより、注意を向け直しやすくなります。
所要 次の区切りまで
04 続けるためのコツ集中の低下とうまく付き合うには?
集中が落ちるのは前提として、区切り・切り替え・休憩を最初から予定に入れます。落ちた自分を責めても、集中は戻りません。
- 集中が落ちたら「疲れた」より「同じ作業が長すぎた」と考え、作業の種類を変える。
- 決まった時間で休む方法は、ポモドーロ・テクニックの研究と勉強の休憩プラン表で扱っています。
- 読書中に字を追うだけになったときの戻し方は、読書中の「心ここにあらず」の記事にまとめています。
- 講義動画で学ぶなら、区切って思い出す見方が使えます。
05よくある質問
勉強の集中力は何分続くの?
決まった時間はありません。「10〜15分が限界」という話は、直接のデータでは支持されないとレビューで指摘されています[1]。ただ、40分の講義動画では集中の自己評価が7点満点で6.0から4.9へ下がった実験があり[2]、同じ作業を続けると集中は少しずつ落ちていきます。
集中が続かないのは、意志が弱いから?
そうとは言えません。時間とともに集中が落ちるのは、実験でくり返し見られる現象です[3]。「意志の力が使い切られる」という説も、大規模な再現実験では効果がほぼ0でした(d=0.04、d=0.06)[6][7]。
集中が切れたら、休憩すれば戻る?
休憩も一つの方法ですが、作業の中身を変えるだけでも注意は向け直せます。講義動画の区切りごとに小テストを入れた実験では、考えがそれた割合が19%で、何もしなかった人の41%より少なくなりました[8]。
出典
- Bradbury, N. A. (2016). Attention span during lectures: 8 seconds, 10 minutes, or more? Advances in Physiology Education, 40(4), 509-513. https://doi.org/10.1152/advan.00109.2016
- Farley, J., Risko, E. F., & Kingstone, A. (2013). Everyday attention and lecture retention: the effects of time, fidgeting, and mind wandering. Frontiers in Psychology, 4, 619. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2013.00619
- Warm, J. S., Parasuraman, R., & Matthews, G. (2008). Vigilance requires hard mental work and is stressful. Human Factors, 50(3), 433-441. https://doi.org/10.1518/001872008X312152
- Thomson, D. R., Besner, D., & Smilek, D. (2015). A resource-control account of sustained attention: evidence from mind-wandering and vigilance paradigms. Perspectives on Psychological Science, 10(1), 82-96. https://doi.org/10.1177/1745691614556681
- Kurzban, R., Duckworth, A., Kable, J. W., & Myers, J. (2013). An opportunity cost model of subjective effort and task performance. Behavioral and Brain Sciences, 36(6), 661-679. https://doi.org/10.1017/S0140525X12003196
- Hagger, M. S., Chatzisarantis, N. L. D., Alberts, H., et al. (2016). A multilab preregistered replication of the ego-depletion effect. Perspectives on Psychological Science, 11(4), 546-573. https://doi.org/10.1177/1745691616652873
- Vohs, K. D., Schmeichel, B. J., Lohmann, S., et al. (2021). A multisite preregistered paradigmatic test of the ego-depletion effect. Psychological Science, 32(10), 1566-1581. https://doi.org/10.1177/0956797621989733
- Szpunar, K. K., Khan, N. Y., & Schacter, D. L. (2013). Interpolated memory tests reduce mind wandering and improve learning of online lectures. Proceedings of the National Academy of Sciences, 110(16), 6313-6317. https://doi.org/10.1073/pnas.1221764110


