時間・計画

「来週なら時間がある」と勉強の予定を詰め込んでしまうのはなぜ?未来の空き時間を多く見積もる研究

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月ごとの暦が描かれた古いカレンダーの版画
Photo: Rijksmuseum / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

今週は忙しいから、資格の勉強は来週から本気を出そう。来月なら時間があるから、講座も申し込んでおこう。ところが来週になると、やはり忙しい。そんな経験はありませんか。これは意志が弱いせいではありません。人は「未来の自分の空き時間」を、今より多めに見積もりやすいことが、研究でわかっています。

3行でわかる

  1. 米国の大学生76人の調査では、今日より1か月後の同じ曜日の方が空き時間が多い、という側に平均で答えが寄った。お金の余裕を聞いたときより、その傾向は強かった。
  2. 3週間前には差がないと見ていた2日間を、当日になると「今日は忙しいが2日後は空く」と感じた。時間の使い道は日によって変わり、先の忙しさは予測しにくい。
  3. 先の予定ほど「やりたいか」で決め、「本当にできるか」を軽く見やすい。来週の予定は、先週の実績と「今日だったら引き受けるか」で確かめてから入れる。

01 悩みの正体来週なら時間がある、と感じるのはなぜ?

今日の用事ははっきり見えるのに、来週の用事はまだ見えていないからです。見えない用事を数えずに見積もるので、未来の空き時間は多めに見えます。

ZaubermanとLynchは、使える時間やお金の「余裕」が、今と将来でどう見えるかを調べました[1]。お金は毎月の出入りが似ていて、先の余裕も読みやすい。ところが時間の使い道は日によってばらばらで、来週どんな用事が割り込むかを想像しにくい。著者らは、人は今日の忙しさを毎回「今日は特別」と感じ、将来も同じくらい新しい用事が入ることを見込めていない、と考えています。

もう1つは、先のことを決めるときの目のつけ所です。日が遠いほど「やりたいか」が重く、「都合がつくか」は軽く扱われやすい[3]。未来の自分のための決定は、今の自分よりも、他人のための決定に似てくるという実験もあります[2]。

作業にかかる時間を短く見積もる「計画錯誤」とは別の仕組みです。計画錯誤は勉強の計画が毎回倒れるのはなぜかにまとめています。空き時間を多く見積もり、作業時間を短く見積もる。2つが重なると、計画は倒れやすくなります。

02 科学的にわかっていること未来の空き時間は、どのくらい多く見えている?

平均すると、今日より1か月後や2週間後の方が空き時間は多いと見込まれ、その傾向はお金よりも時間で強く現れました。ただし、どの調査も米国の大学生が中心です。

ZaubermanとLynch(2005)実験1[1]

大学生に「今日」と「1か月後の同じ曜日」の、どちらに空き時間が多いかを10段階で聞いた(1=今日の方がずっと多い、10=1か月後の方がずっと多い)。平均は8.2で、真ん中の5.5より大きく「1か月後」に寄っていた。お金の余裕について同じように聞くと平均7.0で、時間の方が「先は余裕がある」と感じる傾向が強かった。

対象: 米国ノースカロライナ大学の学部生76人(配った95人のうち、両面に答えた人) / 限界: 見込みを聞いた質問紙で、1か月後に実際に時間が空いたかは測っていない。

ZaubermanとLynch(2005)実験6・7[1]

3週間あけて同じ人に2回聞いた。1回目は、4月6日と4月8日の空き時間にほとんど差がないと見ていた。ところが4月6日の当日に聞くと、「2日後の8日の方が空く」と答えた(−10〜10の差で平均1.00)。お金ではこのずれは見られなかった。別の130人の調査では、「明日のお金の余裕」と「2週間後のお金の余裕」の見込みは関連していた(相関0.45)が、時間では関連がなかった(0.03)。

対象: 米国の大学生48人(実験6)と130人(実験7) / 限界: 小さな調査で、時間とお金の差を比べた統計の一部は「傾向あり」の水準(p=.063)にとどまった。

Proninら(2008)[2]

4つの実験で、「未来の自分」のための決定は「他人」のための決定と似ていて、「今の自分」のための決定とは違っていた。実験の1つは、試験期間に同級生の勉強を手伝う役をどれだけ引き受けるかだった。この違いは本当に引き受ける決定で現れ、仮の質問では現れなかった。

対象: 4つの実験の参加者 / 限界: 全文を確認できなかったため、論文の要旨で確かめられた範囲だけを紹介しています。

TropeとLiberman(2010)[3]

「心理的な距離」の研究をまとめたレビュー。出来事が先であるほど、その魅力は「望ましさ(どれだけやりたいか)」で決まり、「実現しやすさ(都合がつくか)」の影響は小さくなった。たとえば、ゲスト講演に参加するかを決める実験では、日が遠いほど講演の面白さが効き、時間帯の都合は効きにくくなった。

対象: 多くの実験研究をまとめたレビュー / 限界: 勉強の計画そのものを調べた研究ではない。

作業時間の見積もりについては、卒業論文を書くカナダの大学生37人が平均33.9日で終わると予測し、実際には平均55.5日かかった研究があります[4]。

ここで紹介した調査の多くは、米国の大学生が質問紙に答えたものです。仕事や家庭を抱えて独学する社会人を、何か月も追った研究ではありません。それでも「先の空き時間ほど多く見える」という傾向は、計画を立てるときの注意点として役に立ちます。

03 今日からできる小さな一歩来週の勉強の予定は、どう見積もればいい?

来週も今週と同じくらい忙しい、と考えて予定を入れます。量は先週の実績から決め、新しい予定は「今日だったら引き受けるか」で確かめます。

1

先週、実際に勉強できた時間を書き出す

日ごとに、実際に勉強した時間を書きます。来週の計画は、この合計を目安にします。先の空き時間は多めに見えやすいので、見込みではなく実績から始めます[1]。

所要 5分

2

「これが今日だったら引き受けるか」と聞き直す

講座の申し込み、勉強会、教材の追加など、先の予定を入れる前に考えます。遠い予定は「やりたいか」で決めやすく、今日に置きかえると「都合がつくか」に目が向きます[3]。研究を当てはめた、この記事の提案です。

所要 1分

3

来週の予定表に「まだ見えない用事」の空きを残す

勉強の予定を全部の日に入れず、空けておく日をつくります。どれだけ空けるかは研究で決まっていないので、先週の実績と予定のずれを目安にします。今は見えない用事が、来週にも必ず入ってくるからです[1]。

所要 3分

04 続けるためのコツ予定の詰め込みを、くり返さないためには?

週に1回、予定と実績を比べて、次の週の量を決め直します。見込みがどれだけずれるかを自分の数字で知ると、詰め込みに気づきやすくなります。

05よくある質問

「来週こそ時間がある」と思うのは、楽観的な性格のせい?

性格だけの問題とは言い切れません。調査では、時間の余裕の見込みとお金の余裕の見込みの間に、はっきりした関連がありませんでした。著者らは、楽観的な性格のような全般的な傾向ではないと考えています[1]。多くの人に起きやすいことです。

先の予定を入れること自体、やめた方がいい?

やめる必要はありません。著者らは、遠くから決める方が大きな目標に沿った選択になるという見方もあると紹介しています。そのうえで、小さな引き受けを先に積み重ねると後で困りやすい、と考えています[1]。量を今の実績で確かめてから入れるのが現実的です。

「来月から勉強を始める」と決めるのはだめ?

来月なら時間がある、という見込みは当たりにくいことが研究でわかっています[1]。始める日を先にするなら、その週も今週と同じくらい忙しいと考え、先週の実績で無理のない量にしておきます。

出典

  1. Zauberman, G., & Lynch, J. G., Jr. (2005). Resource slack and propensity to discount delayed investments of time versus money. Journal of Experimental Psychology: General, 134(1), 23–37. https://doi.org/10.1037/0096-3445.134.1.23
  2. Pronin, E., Olivola, C. Y., & Kennedy, K. A. (2008). Doing unto future selves as you would do unto others: Psychological distance and decision making. Personality and Social Psychology Bulletin, 34(2), 224–236. https://doi.org/10.1177/0146167207310023
  3. Trope, Y., & Liberman, N. (2010). Construal-level theory of psychological distance. Psychological Review, 117(2), 440–463. https://doi.org/10.1037/a0018963
  4. Buehler, R., Griffin, D., & Ross, M. (1994). Exploring the “planning fallacy”: Why people underestimate their task completion times. Journal of Personality and Social Psychology, 67(3), 366–381. https://doi.org/10.1037/0022-3514.67.3.366