集中・環境

勉強と運動の1週間プラン表。運動は勉強の前か後か、何分・どの強さで入れるか(運動のタイミングと記憶の研究から)

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陸上競技場のトラック
Photo: Spatms / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「運動すると頭が良くなる」と聞いても、勉強の前に走ればいいのか、後がいいのか、何分やればいいのかまではわかりません。研究をまとめると、1回の運動の効果は小さく、しかも「いつ動くか」で結果が変わっていました。この記事では、その結果を1週間の計画表と2週間の比べ方の表にしました。

3行でわかる

  1. 1回の運動が頭の働きに与える効果は小さい。79件の研究をまとめた分析では、全体でg=0.097だった。
  2. 効果はタイミングで変わる。覚えた直後の運動では記憶がよくなり(d=0.47)、覚えながらの運動ではわずかに悪くなった(d=−0.12)。
  3. 表1で「勉強の後に運動する日」を決め、表2で記録し、表3で運動した日としない日の翌日の小テストを比べる。

01 この表でできること勉強の前と後、運動はどちらがいい?

記憶については、勉強の後の運動の方が研究の結果がそろっています。勉強しながらの運動は、記憶をわずかに悪くするという結果でした。どちらも効果は小さいので、自分の記録で確かめるのが確実です。

運動と記憶の研究全体の話は、運動すると記憶はよくなるのかの記事で紹介しました。この記事はその続きで、勉強と運動をどう並べるかを表にしたものです。

表は3つあります。表1は研究から作った「並べ方の早見表」。表2は1週間の計画と記録の表。表3は、2週間たったときに効いたかどうかを比べる表です。

02 表の根拠になった研究運動のタイミングで、記憶はどう変わる?

運動を覚えた後にしたときは記憶がよくなり、覚えている最中にしたときはわずかに悪くなりました。覚える前の運動は、若い大人ではよくなり、高齢者では悪くなるという分かれた結果でした。

Loprinziら(2019)[1]

25本の論文をまとめ、1回の運動を「覚える前・覚えている最中・覚えた直後・しばらく後」に分けて比べた。覚えた直後の運動はd=0.47、しばらく後はd=1.05で記憶がよくなった。覚えている最中の運動はd=−0.12で、わずかに悪くなった。覚える前はd=0.11で、はっきりした差はなかった。

対象: 18〜84歳、1研究10〜352人 / 限界: 覚えた後の時期の研究は少なく、出版の偏り(効果のあった研究ほど発表されやすいこと)が見られたと著者ら自身が書いている。

Loprinziら(2019)の年齢・強さ別の結果 [1]

覚える前の運動は、若い大人ではd=0.18でよくなったが、高齢者ではd=−0.53で悪くなった。覚えた直後の運動は、息がかなり上がる強さ(最大心拍数の76%超)でd=1.09と大きく、軽い運動(64%未満)ではd=−0.59で悪くなった。

対象: 上と同じ研究の中の小分け / 限界: 小分けにすると研究の数がさらに少なくなる。数字は目安として読む。

Qaziら(2024)[2]

42の実験をまとめた別の分析。覚える前の運動はd=0.23、覚えた後の運動はd=0.33で記憶がよくなった。覚えている最中の運動はd=−0.04で、影響が見られなかった。覚える前の運動は、何も見ずに書き出すテスト(d=0.40)で効果が大きく、選択式のテスト(d=−0.06)ではなかった。

対象: エピソード記憶(出来事や覚えた単語の記憶)の実験 / 限界: 年齢や運動の種類で結果が変わったと著者らは報告している。

Changら(2012)[3]

1回の運動と頭の働き(記憶・注意・判断など)の研究79件をまとめた。全体の効果はg=0.097と小さかった。運動中・運動直後・時間をおいてからのどれで測っても、効果はg=0.10前後だった。運動の長さ・強さ・体力で効果が変わった。

対象: 1回の運動を扱った研究79件 / 限界: 著者らは「効果はおおむね小さいが、特定の条件ではより大きくなりうる」とまとめている。

Roigら(2013)[4]

1回の運動は長期の記憶をよくした(SMD=0.52)。一方、何週間も運動を続ける介入は、長期の記憶にはっきりした効果がなかった(SMD=0.07、統計的に差なし)。著者らは、1回の運動は覚えた情報を定着させる過程を後押しすると考えている。

対象: 1回の運動の研究29件、長期間の運動の研究21件 / 限界: 仕組みの説明は著者らの解釈で、この分析で直接測ったものではない。

Garrettら(2024)[5]

健康な若い大人の研究113件(4,390人)をまとめ、発表されていない研究の影響を補正した。それでも1回の運動には小さいながら頭の働きをよくする効果があった(g=0.13)。

対象: 健康な若い大人 / 限界: 運動を種類(自転車など)で分けたため、強さで分けた研究とは比べにくいと著者らは書いている。

ここで紹介した実験の多くは、大学生などが実験室で単語や絵を覚え、数分〜1日後にテストしたものです。社会人が何か月もかけて資格の勉強をする場合に、同じ大きさの効果が出るとは限りません。だから自分の記録で確かめます。

03 使える表勉強と運動の1週間の計画は、どう立てる?

覚える勉強の後に10〜30分の息がはずむ運動を入れる日と、入れない日を表2に書き分けます。翌日に同じ小テストをして、2週間後に表3で正答数を比べます。

表1 勉強と運動の並べ方(研究の結果のまとめ)。dは効果の大きさで、0.2が小さい、0.5が中くらいの目安です。

並べ方研究の結果表2での使い方
覚えた後に運動記憶がよくなった(d=0.47[1]、d=0.33[2])。ただし研究は少なめまずはこの並べ方を試す
覚える前に運動はっきりしない(d=0.11[1])〜小さくよくなる(d=0.23[2])。高齢者では悪くなった(d=−0.53[1])勉強前に動きたい日だけ。年齢が高い人は後に回す
運動しながら覚えるわずかに悪くなる(d=−0.12[1])〜影響なし(d=−0.04[2])暗記の時間にはしない。聞き流しの復習くらいにとどめる
軽すぎる運動を後に悪くなった(d=−0.59[1])。研究はごく少ない後に入れるなら、少し息がはずむ強さにする
1

覚える勉強の日を決める

単語・用語・公式など、翌日にテストできる内容の日を選びます。研究の多くは「覚える」課題で、読解や問題演習ではあまり調べられていません。

所要 3分(週1回)

2

運動する日としない日を交互に書く

表2の「運動」欄に、月・水・金は「後に運動」、火・木は「なし」のように書き分けます。両方の日がないと、比べられません。

所要 2分

3

勉強の後、すぐに10〜30分動く

早歩き・ジョギング・自転車など、会話が少し苦しくなるくらいの強さにします。時間の目安は研究の幅から選んだもので、決まった最適の長さはわかっていません。

所要 10〜30分

4

翌日、同じ形の小テストをする

前の日に覚えた20個のうち、何も見ずに書き出せた数を数えます。暗記カードの使い方の記事の方法で、カードを使ってもかまいません。

所要 5分

表2 1週間の計画と記録の表。記入例は架空の数字です。

曜日覚えた内容と数運動(前・後・なし)種類と分強さ(会話できる・少し苦しい)翌日の小テスト
例 月例 単語20個例 後例 早歩き20分例 少し苦しい例 14/20
例 火例 単語20個例 なし例 -例 -例 12/20
例 水例 単語20個例 後例 自転車15分例 少し苦しい例 15/20
木
金
土
日

表3 2週間たったら比べる表。研究の数字ではなく、このサイトが記録の使い方としてまとめた目安です。

記録に出ていること次の2週間にすること
運動した日の翌日の方が、平均で2問以上多い運動を勉強の後に固定する。覚える量の多い日を運動の日に合わせる
差が1問以内記憶への効果は小さいと考える。運動は体調や気分のために続け、勉強の順番にはこだわらない
運動した日の方が少ない運動が軽すぎないか、疲れすぎていないかを見る。強さを「少し苦しい」にそろえて、もう2週間比べる
運動した日の睡眠が短い夜遅い運動で眠りが削られていないか確かめる。睡眠の記録表と一緒につける

長く座って勉強する日の休憩の動き方は、休憩に体を動かすやり方の記事にまとめています。

04 続けるためのコツ運動と勉強の記録を続けるには?

記録するのは「運動したか」と「翌日の小テストの数」の2つだけで十分です。小テストの形をそろえないと比べられないので、問題の数と出し方は2週間変えません。

  • 比べるのは2週間で6日以上ずつ。1日ごとの点数は、内容の難しさでも上下します。
  • 運動しない日を「さぼり」にしない。比べるための日なので、表に「なし」と書けば予定どおりです。
  • 勉強中に体を動かすのは、覚える時間以外にする。研究では、覚えている最中の運動は記憶をよくしませんでした。
  • 持病のある人や、運動に慣れていない人は、強さを上げる前に体調と相談します。

05よくある質問

勉強の前と後、運動するならどちらがいい?

覚える勉強なら、後の方が研究の結果がそろっています。25本の論文をまとめた分析では、覚えた直後の運動で記憶がよくなり(d=0.47)、覚える前の運動でははっきりした差がありませんでした(d=0.11)。ただし覚えた後の時期の研究は少なく、別の分析では覚える前の運動でも小さな効果(d=0.23)が出ています。

ランニングマシンで歩きながら単語を覚えるのはいい?

研究からはすすめられません。覚えている最中の運動は、記憶をわずかに悪くするか(d=−0.12)、影響がない(d=−0.04)という結果でした。歩くなら、覚え終わった後にします。

毎日運動を続ければ、記憶力そのものが上がる?

はっきりしていません。何週間も運動を続ける研究をまとめた分析では、長期の記憶への効果は統計的に差がありませんでした(SMD=0.07)。運動は体の健康や睡眠のために続ける価値がありますが、記憶力を上げる方法としては、勉強のすぐ後に入れる使い方の方が研究の裏づけがあります。

何分くらい運動すればいい?

決まった最適な長さはわかっていません。研究では、2分の走りから60分の早歩きまで、さまざまな運動が調べられていました。この記事では、続けやすさも考えて10〜30分を目安にしています。強さは、軽すぎると効果が見られなかった研究があるので、少し息がはずむくらいにします。

出典

  1. Loprinzi PD, Blough J, Crawford L, Ryu S, Zou L, Li H (2019). The Temporal Effects of Acute Exercise on Episodic Memory Function: Systematic Review with Meta-Analysis. Brain Sciences, 9(4), 87. https://doi.org/10.3390/brainsci9040087
  2. Qazi AS, Schmid D, Gridley N, Lambourne K, Daly-Smith AJ, Tomporowski PD (2024). The effects of acute exercise on long-term episodic memory: a systematic review and meta-analysis. Frontiers in Cognition, 3, 1367569. https://doi.org/10.3389/fcogn.2024.1367569
  3. Chang YK, Labban JD, Gapin JI, Etnier JL (2012). The effects of acute exercise on cognitive performance: a meta-analysis. Brain Research, 1453, 87-101. https://doi.org/10.1016/j.brainres.2012.02.068
  4. Roig M, Nordbrandt S, Geertsen SS, Nielsen JB (2013). The effects of cardiovascular exercise on human memory: a review with meta-analysis. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 37, 1645-1666. https://doi.org/10.1016/j.neubiorev.2013.06.012
  5. Garrett J, Chak C, Bullock T, Giesbrecht B (2024). A systematic review and Bayesian meta-analysis provide evidence for an effect of acute physical activity on cognition in young adults. Communications Psychology, 2, 82. https://doi.org/10.1038/s44271-024-00124-2