勉強法

用語の定義は覚えたのに問題で使えない。具体例はどう使う?2つの例を並べて比べるやり方(具体例と事例比較の研究)

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机の上のノートと、印刷した紙と赤ペン
Photo: SCP Foundation - Scientific Department / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

用語の定義は暗記できたのに、問題文で少し言い方が変わると、どの用語の話かわからない。資格試験の勉強でよくあるつまずきです。研究からわかるのは、定義を読み返すより、具体例を2つ以上並べて「共通する仕組み」を書き出す方が、新しい場面で使える知識になりやすいことです。

3行でわかる

  1. 2つの事例を別々に読むより、並べて比べた人の方が、学んだ方法をその後の交渉で取り入れる割合がおよそ3倍だった実験がある。
  2. 定義を思い出す練習より、具体例を思い出す練習の方が、用語を新しい場面に当てはめる成績が高かった。
  3. やり方は、①例を2つ集める ②定義の部分と線で結ぶ ③共通点を書く ④例を思い出す ⑤細部を変えた問題で試す、の5つ。

01 悩みの正体定義を覚えたのに、問題で使えないのはなぜ?

定義の文章だけでは、どんな場面でその用語が当てはまるのかが見えにくいからです。一方で、例を1つだけ覚えると、その例の表面(登場人物や数字)に引っぱられやすくなります。

学び方の研究をまとめたレビューは、抽象的な考えに具体例を添えると、理解しやすく覚えやすくなると整理しています[1]。

ただし同じレビューは、初心者は例の「表面の細部」を覚えやすく、その下にある仕組みを取り出しにくいとも指摘しています[1]。例を使うかどうかより、「どう使うか」で差が出ます。

02 科学的にわかっていること具体例は、どう使うと応用がきく?

具体例は1つより複数を、別々にではなく並べて比べると、新しい場面に移しやすくなります。また、定義より例そのものを思い出す練習が、用語を当てはめる力につながった実験があります。

Loewensteinら(1999)[2]

交渉の方法を、2つの事例から学ぶ実験。2つの事例を比べて共通点を考えた経営学の大学院生は、同じ事例を別々に読んだ大学院生より、学んだ方法をその後の交渉で取り入れる割合がおよそ3倍だった。

対象: 大学生と経営学の大学院生(2つの実験) / 限界: 交渉の技術を学ぶ実験で、試験勉強の用語で確かめたものではない。論文の要旨で確認。

Weinsteinら(2018)[1]

学び方の研究をまとめたレビュー。GickとHolyoak(1983)の研究で、例が1つより複数の方が、見た目の違う問題への応用が進んだことを紹介している。表面の細部が違う例どうしだと、特に効果があったという。2つの例がどう似ているかを自分で説明すると、応用の助けになるとも述べている。

対象: 複数の研究をまとめたレビュー / 限界: 例がいくつあれば十分かは、まだわかっていないと著者ら自身が書いている。

Wissmanら(2023)[3]

10個の用語について、定義と例が1つずつ載った教科書の文章を読んだ後、「定義を思い出す練習」か「例を思い出す練習」をした。2つの実験のどちらでも、例を思い出す練習をした人の方が、用語を新しい場面に当てはめる成績が高かった。

対象: 入門の授業で学ぶような用語(例: 心理学の「正の強化」) / 限界: 参加者の人数や国は要旨に書かれていない。論文の要旨で確認。

Kaminskiら(2013)・Trninicら(2020)[4][5]

大学生の5つの実験では、余計な情報が多い具体的な例より、必要な部分だけの簡素な例の方が、別の場面への応用が良かった[4]。一方、この「簡素な例が有利」という主張を検証し直した研究では、具体例を改良すると、簡素な例と同じかそれ以上の成績になった[5]。

対象: 大学生が数学の決まりを学ぶ実験 / 限界: 数学の1つの課題での議論で、結論はまだ分かれている。どちらも論文の要旨で確認。

まとめると、効きやすいのは「仕組みが見える例を複数、比べて使う」ことです。ここで紹介した研究は、大学生や大学院生の短い実験が中心です。社会人が何か月もかけて独学する場面で、同じ大きさの効果が出るかは確かめられていません。

03 今日からできる小さな一歩具体例を使った勉強は、どう進める?

1つの用語につき、表面の違う具体例を2つ集めます。定義の各部分と例を線で結び、2つに共通する仕組みを1行で書きます。復習では、定義より例を思い出し、最後に細部を変えた問題で試します。

1

表面の違う具体例を2つ集める

教科書・問題集の解説から、同じ用語の例を2つ探します。業種・登場人物・数字ができるだけ違うものを選びます。違う例どうしを比べる方が、応用の助けになると報告されています[1]。

所要 1用語5分

2

定義の各部分と、例のどこが対応するかを線で結ぶ

定義を「条件」ごとに区切り、例の中でその条件に当たる言葉に線を引きます。例と説明が食い違うと、人は例の方に従いやすいので[1]、対応が見えない例は使いません。

所要 5分

3

2つの例に共通する仕組みを1行で書く

「2つとも○○だから、この用語に当たる」と自分の言葉で書きます。別々に読むより、並べて比べることが大事です[2]。違う点(業種や金額など)は、当てはまるかどうかに関係ない部分として書き分けます。

所要 3分

4

復習では、定義より「例」を思い出す

用語を見たら、何も見ずに例を1つ書きます。書けたら、手順3の「共通する仕組み」も言えるか確かめます。例を思い出す練習が、当てはめる力につながった実験があります[3]。思い出す練習の基本は思い出す練習の記事にまとめています。

所要 1用語1分

5

細部を変えた問題で、当てはまるか試す

過去問や別の問題集から、見た目の違う問題を選び、どの用語に当たるかを先に答えます。外れたら、引っぱられた細部(目立つ人物や数字など)を手順3の表に書き足します。関係ない細部に気を取られると学びが妨げられることがあるためです[1][4]。

所要 10分

具体例の比べ表(1用語につき1行ずつ書く)
書く欄書き方
用語と定義定義を「条件」ごとに区切って書く(条件1・条件2…)
例1・例2表面の違う例を1行ずつ。各条件に当たる言葉に番号をふる
共通する仕組み「2つとも○○だから当てはまる」を1行で
関係ない違い業種・人物・金額など、当てはまるかどうかに関係ない違い
試した問題手順5で解いた問題の番号と、正解・不正解

表の形は、上の研究の手順を元にした、この記事での整理です。表の形そのものの効果を研究で比べたわけではありません。

04 続けるためのコツ具体例を使う勉強を、無理なく続けるには?

全部の用語でやらず、問題で間違えた用語と、似た用語と混ざりやすい用語から始めます。例が見つからないときは、教材の解説や過去問の事例をそのまま使います。

  • 1日に比べ表を書くのは3用語まで。間違えた用語から優先する。
  • 似た用語どうしが混ざるときは、比べ表を2つ並べて違いを書く。やり方は似た用語が混ざったときの記事で紹介しました。
  • 計算問題なら、解き方の例題を使うやり方が向いています(例題学習の記事)。
  • 自分で作った例は、教材の定義と照らして、全部の条件を満たしているか確かめてから使う。

05よくある質問

具体例を覚えるより、定義を正確に覚えた方がいいのでは?

試験で定義そのものを書かせる問題なら、定義の暗記も必要です。ただ、用語を事例に当てはめる問題では、例を思い出す練習をした人の方が成績が高かった実験があります。定義は手順2のように例と結びつけて覚えると、両方に役立ちます。

具体例は1つでは足りませんか?

1つだけだと、その例の人物や数字などの表面に引っぱられやすくなります。研究のレビューでは、見た目の違う複数の例の方が、新しい問題への応用が進んだと紹介されています。何個が最適かはまだわかっていないため、まずは2つから始めます。

面白い例やたとえ話を使ってもいいですか?

中身に関係する面白い例は、用語の中身の記憶を損なわないようだという研究が、レビューで紹介されています。ただし、用語と関係ない話で印象に残るものは、かえって学びを妨げることがあります。例が定義のどの部分に当たるかを確かめてから使います。

出典

  1. Weinstein, Y., Madan, C. R., & Sumeracki, M. A. (2018). Teaching the science of learning. Cognitive Research: Principles and Implications, 3, 2. https://doi.org/10.1186/s41235-017-0087-y
  2. Loewenstein, J., Thompson, L., & Gentner, D. (1999). Analogical encoding facilitates knowledge transfer in negotiation. Psychonomic Bulletin & Review, 6(4), 586–597. https://doi.org/10.3758/BF03212967
  3. Wissman, K. T., Zamary, A., Rawson, K. A., & Dunlosky, J. (2023). Enhancing declarative concept application: The utility of examples as primary targets of learning. Journal of Experimental Psychology: Applied, 29(2), 341–357. https://doi.org/10.1037/xap0000432
  4. Kaminski, J. A., Sloutsky, V. M., & Heckler, A. F. (2013). The cost of concreteness: The effect of nonessential information on analogical transfer. Journal of Experimental Psychology: Applied, 19(1), 14–29. https://doi.org/10.1037/a0031931
  5. Trninic, D., Kapur, M., & Sinha, T. (2020). The disappearing "advantage of abstract examples in learning math". Cognitive Science, 44(7), e12851. https://doi.org/10.1111/cogs.12851