週末に寝坊すると、月曜の勉強がはかどらないのはなぜ?平日と休日の寝る時間のずれ「社会的時差ぼけ」と成績の研究

土日にゆっくり寝たのに、月曜の朝はかえって頭が重い。そんな経験はありませんか。平日と休日で寝る時間がずれると、体内時計と生活の時刻が合わなくなります。研究者はこれを「社会的時差ぼけ」と呼びます。ずれが大きい学生ほど成績が低い傾向が見つかっています。ただし観察研究で、関係が見られなかった研究もあります。
3行でわかる
- 平日と休日の「睡眠の真ん中の時刻」の差を、社会的時差ぼけと呼ぶ。休日に遅く寝て遅く起きるほど、月曜は体内時計より早い時刻に頭を使うことになる。
- アメリカの大学生1万4894人の記録では、60%が平均30分以上のずれを抱え、ずれが大きいほど成績が低い傾向だった。睡眠時間の長さでは説明できなかった研究もある。
- どれも観察研究で、寝坊が成績を下げると証明されたわけではない。3年間追ったカナダの研究では、ずれは学業を予測しなかった。
01 悩みの正体週末に寝坊すると、なぜ月曜がつらい?
休日に寝る時刻と起きる時刻が遅くなると、体内時計も遅れます。月曜はその遅れた時計のまま早起きするので、海外旅行の時差ぼけに似た状態になります。
人の眠りと目覚めは、体内時計に左右されます。体内時計は、朝の光などで毎日少しずつ合わせ直されています。
ところが平日は、仕事や学校の時刻に合わせて起きます。休日は、体内時計に合わせて遅くまで寝ます。この「生活の時刻」と「体の時刻」のずれを、Wittmannら(2006)は「社会的時差ぼけ(ソーシャル・ジェットラグ)」と名づけました[1]。夜型の人ほど、平日と休日の差が大きくなりやすいとされています。
ずれの大きさは、平日と休日の「睡眠の真ん中の時刻」の差で表します。自分の場合を、下の表で計算できます。
表1 社会的時差ぼけの計算(睡眠の真ん中=寝た時刻と起きた時刻のちょうど中間)
| 寝た時刻 | 起きた時刻 | 睡眠の真ん中 | |
|---|---|---|---|
| 平日(例) | 0:00 | 6:30 | 3:15 |
| 休日(例) | 1:30 | 9:30 | 5:30 |
| ずれ(社会的時差ぼけ) | 2時間15分 | ||
| あなたの平日 | |||
| あなたの休日 |
この例では、休日の体は平日より2時間15分遅い時刻で動いています。月曜の朝は、タイから日本へ帰ってきた翌朝に、日本の時刻で早起きするようなものです。
02 科学的にわかっていること寝る時間のずれが大きいと、成績は下がる?
ずれが大きい学生ほど成績が低い傾向は、いくつもの研究で見つかっています。ただしどれも観察研究で、因果は確かめられていません。関係が見られなかった追跡研究もあります。
Harasztiら(2014)[2]
ハンガリーのセンメルワイス大学の学生に睡眠の質問票(753人)に答えてもらい、247人の成績と照らし合わせた。授業が決まった時刻にある期間は、ずれが大きい人ほど毎週の小テストの平均点が低かった(p = 0.028)。予定のない試験期間には、この関係は消えた(p = 0.871)。休日に遅く寝る人は、朝の小テストで成績が悪かった(p = 0.017、129人)。平日の睡眠時間や睡眠不足とは、成績の関係が見られなかった。
対象: ハンガリーの大学生 / 限界: 一時点の観察研究で、ずれが成績を下げたとは言えない。
SmarrとSchirmer(2018)[3]
アメリカの大学で、1万4894人の学生が2年間に学習システムへログインした約340万回の時刻を分析した。授業のある日とない日で活動の時刻がずれる人が多く、60%が平均30分以上ずれていた。ずれが大きいほど成績(GPA)が低い傾向があり、夜型の学生ではどの時間帯の授業でも成績が低かった。
対象: 10代〜70代の大学生(年齢の中央値25歳) / 限界: 睡眠そのものではなく、ログインの時刻から推定している。著者らも「生物学的な測定ではない」と書いている。
Phillipsら(2017)[4]
ハーバード大学の学生61人が30日間、睡眠日誌をつけた。寝起きの規則正しさの指標が10上がるごとに、GPAは平均0.10高かった(r = 0.37)。不規則なグループは3.42、規則正しいグループは3.72だった。2つのグループの睡眠時間はほぼ同じ(約7.2時間)で、睡眠時間とGPAには関係がなかった。不規則な人は、体内時計の目安となるホルモン(メラトニン)が出始める時刻が2時間半ほど遅く、浴びる光のめりはりも小さかった。
対象: 18〜24歳の大学生 / 限界: 著者らは「因果関係は確かめられない。規則正しさは、生活全体の規則正しさの目印かもしれない」としている。
Liら(2024)[5]
アメリカの11〜14歳6890人のデータで、社会的時差ぼけが大きい人ほど、自己申告の成績と認知テストの成績が低かった。著者らは、効果の大きさは小さいとしている。
対象: 11〜14歳 / 限界: 一時点の観察研究で、成績は自己申告。
Tavernierら(2015)[6]
カナダの大学生942人を、1年ごとに3年間追跡した。夜型だと感じている人は、その後の学業への適応が悪かった。しかし社会的時差ぼけは、その後の学業への適応を予測しなかった。夜型と学業の関係を、ずれでは説明できなかった。
対象: 入学時の平均19歳 / 限界: 学業は成績ではなく、本人の回答による「適応」で測っている。
表2 研究のまとめ
| 研究 | 対象 | わかったこと |
|---|---|---|
| Harasztiら(2014) | ハンガリーの大学生247人 | 授業期間中、ずれが大きい人ほど毎週の小テストの平均点が低かった |
| SmarrとSchirmer(2018) | アメリカの大学生1万4894人 | 授業の日と休みの日で活動時刻が30分以上ずれる人が60%。ずれが大きいほど成績が低い傾向 |
| Phillipsら(2017) | アメリカの大学生61人 | 寝起きの時刻が不規則な人ほど成績が低い。睡眠時間の長さとは関係がなかった |
| Liら(2024) | アメリカの11〜14歳6890人 | ずれが大きい人ほど成績と認知テストがやや低い(効果は小さい) |
| Tavernierら(2015) | カナダの大学生942人を3年間追跡 | ずれは、その後の学業への適応を予測しなかった |
研究の多くは大学生や中高生が対象で、働きながら独学する社会人を調べた研究は見つかりませんでした。社会的時差ぼけと成績の関係をまとめたメタ分析も見つかっていません。夜型であること、睡眠不足、生活の乱れなど、ほかの要因と分けにくい点にも注意が必要です。
03 今日からできる小さな一歩週末の寝坊で月曜をつらくしないには?
まず表1で自分のずれを測ります。そのうえで、休日の起きる時刻を平日に少し近づけ、月曜の朝いちばんには重い勉強を置かないようにします。
1週間、寝た時刻と起きた時刻を書く
表1に平日と休日の「睡眠の真ん中」を書き、差を出します。差が小さい人は、ここで終わってかまいません。
所要 1日1分
休日の起床を、平日に少し近づける
寝る時刻より、起きる時刻をそろえる方が手をつけやすいです。足りない分は、休日に長く寝るより、平日の夜を早めて補います。Phillipsらの研究で成績と関係していたのは、睡眠時間の長さより寝起きの規則正しさでした。
所要 休日の朝
休日の朝に、外の光を浴びる
起きたら窓辺や外で過ごします。不規則な学生は浴びる光のめりはりが小さく、研究者は体内時計の遅れの主な理由を光の浴び方だと見ています。
所要 15分ほど
月曜の朝は、軽い勉強から始める
休日に遅く寝る人は、朝のテストで点が低かった研究があります。月曜の朝は復習や単語の確認にし、新しい内容や難しい問題は昼以降に回します。
所要 予定を入れ替えるだけ
04 続けるためのコツ休日も早起きしないといけない?
休日まで平日と同じ時刻に起きる必要はありません。研究は因果を示していないので、ずれを少し縮めて、月曜の調子が変わるかを自分で確かめるのが現実的です。
- いきなり大きく変えない。まずは休日の起床を少し早めるだけにします。
- 月曜の手応えを記録する。ずれを縮めた週と縮めなかった週で、月曜の勉強のはかどり方を比べます。勉強する人の睡眠チェック表が使えます。
- 夜型の自分を責めない。体内時計の早い・遅いには個人差があります。自分の型に合う時間帯は朝と夜、勉強に向いている時間の研究や時間帯別の勉強メニュー表で考えられます。
- 早起きの勉強が続かなかった人は、朝の勉強が続かなかったときの立て直し方も参考になります。
05よくある質問
週末の寝だめは、勉強に悪いですか?
悪いとは言い切れません。平日と休日のずれが大きい学生ほど成績が低い傾向はありますが、どれも観察研究です。3年間追跡したカナダの大学生942人の研究では、ずれはその後の学業への適応を予測しませんでした。寝不足を補うこと自体より、ずれが大きくなりすぎないことに気をつけます。
睡眠時間が足りていれば、寝る時刻はばらばらでもいいですか?
ハーバード大学の学生61人の研究では、規則正しい人も不規則な人も睡眠時間は約7.2時間でほぼ同じでしたが、GPAは3.72と3.42で差がありました。時間だけでなく、寝起きの時刻のそろい方にも目を向ける価値があります。ただし因果は確かめられていません。
社会的時差ぼけは、どのくらいなら問題ですか?
何時間を超えると成績に響く、という基準は研究で決まっていません。まず自分のずれを表1で測り、ずれを縮めた週に月曜の調子が変わるかを確かめてください。
出典
- Wittmann, M., Dinich, J., Merrow, M., & Roenneberg, T. (2006). Social jetlag: Misalignment of biological and social time. Chronobiology International, 23(1–2), 497–509. https://doi.org/10.1080/07420520500545979
- Haraszti, R. Á., Ella, K., Gyöngyösi, N., Roenneberg, T., & Káldi, K. (2014). Social jetlag negatively correlates with academic performance in undergraduates. Chronobiology International, 31(5), 603–612. https://doi.org/10.3109/07420528.2013.879164
- Smarr, B. L., & Schirmer, A. E. (2018). 3.4 million real-world learning management system logins reveal the majority of students experience social jet lag correlated with decreased performance. Scientific Reports, 8, 4793. https://doi.org/10.1038/s41598-018-23044-8
- Phillips, A. J. K., Clerx, W. M., O'Brien, C. S., Sano, A., Barger, L. K., Picard, R. W., Lockley, S. W., Klerman, E. B., & Czeisler, C. A. (2017). Irregular sleep/wake patterns are associated with poorer academic performance and delayed circadian and sleep/wake timing. Scientific Reports, 7, 3216. https://doi.org/10.1038/s41598-017-03171-4
- Li, A. R., Thomas, M. L., Gonzalez, M. R., McCarthy, M. J., Hasler, B. P., Tapert, S. F., & Meruelo, A. D. (2024). Greater social jetlag predicts poorer NIH Toolbox crystallized cognitive and academic performance in the Adolescent Brain Cognitive Development (ABCD) study. Chronobiology International, 41(6), 829–839. https://doi.org/10.1080/07420528.2024.2353848
- Tavernier, R., Munroe, M., & Willoughby, T. (2015). Perceived morningness-eveningness predicts academic adjustment and substance use across university, but social jetlag is not to blame. Chronobiology International, 32(9), 1233–1245. https://doi.org/10.3109/07420528.2015.1085062


