記憶・覚え方

「覚えよう」と何度も読んだのに残らないのはなぜ?覚える気持ちより「意味を考えたか」で決まる、処理の深さの研究

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教科書とカードが置かれた勉強机
Photo: brewbooks from near Seattle, USA / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「今日こそ覚えるぞ」と気合いを入れて、用語集を何度も読み上げた。なのに翌日、半分も出てこない。一方で、雑談で聞いただけの話がなぜか頭に残っている。覚える気持ちの強さと、残る量がかみ合わないのはなぜでしょうか。記憶の研究では、50年以上前から「覚えようとしたか」より「そのとき意味を考えたか」が、後で思い出せる量を大きく左右することが確かめられてきました。

3行でわかる

  1. 覚えた量を大きく分けるのは、覚える気持ちの強さより、読んだときに意味を考えたか(処理の深さ)。音や字の形だけを見た単語より、意味を考えた単語の方がよく残る。
  2. 2025年の3つの実験(計282人)でも、意味を考えた単語は直後も24時間後もよく覚えられていた。ただし忘れていく速さは同じで、深く覚えても復習はいる。
  3. 「覚えようとする気持ちは関係ない」と教科書で言われてきたが、2023年の11の実験では、覚える気持ちにも効果があった。気合いは無駄ではなく、意味を考える作業と組み合わせるのがよい。

01 悩みの正体覚えようと何度読んでも残らないのはなぜ?

くり返し読む・声に出すだけだと、頭の中では文字や音の処理で終わりやすい。記憶に残るかどうかは、そのとき言葉の意味をどれだけ考えたかで大きく変わる、と考えられている。

1972年に心理学者のクレイクとロックハートは、記憶に残るかどうかは、覚えるときの頭の使い方の「深さ」で決まる、という考え方を出しました[1]。処理水準(処理の深さ)と呼ばれます。

「浅い処理」は、字の形や音に注目すること。たとえば「この単語はどんな文字の並びか」「この単語は○○と韻を踏むか」を考える作業です。「深い処理」は、意味に注目すること。「この単語は、この文に当てはまるか」を考える作業です。深い処理をするほど、ほかの知識とのつながりが増え、後で思い出す手がかりが多くなると説明されています[4]。

独学に置きかえると、用語集を「目で追う」「口で唱える」だけの時間は、浅い処理になりやすいということです。気合いを入れても、意味を考える作業がなければ、記憶に残る量はあまり増えません。

02 科学的にわかっていること意味を考えると、どれくらい残りやすい?

意味を考えた単語は、音や形だけを見た単語よりよく覚えられていた。この差は覚えるつもりがあってもなくても見られた。ただし忘れる速さは変わらず、覚える意図にも効果がある。

CraikとTulving(1975)[2]

10の実験で、単語ごとに、文字の形・音(韻を踏むか)・意味(この文に当てはまるか)を問う質問に答えさせた。意味を考える質問に答えた単語ほど、後のテストでよく覚えられていた。覚えるよう言われた場合(意図的な学習)でも、後でテストがあると知らされていない場合(偶発的な学習)でも、同じ傾向だった。

対象: 単語のリストを覚えた実験の参加者 / 限界: 単語を1つずつ覚える実験。原論文は有料のため、この記事では2025年の研究[3]と2014年のレビュー[4]による紹介で内容を確認した。

Pengら(2025)[3]

CraikとTulvingのやり方をもとにした3つの実験(計282人)。単語1つにつき5秒で、「文に当てはまるか」か「韻を踏むか」などの質問に答えた。実験1では、意味を考えた単語の見分けやすさ(d′)は直後2.61、24時間後1.01。音を考えた単語は直後2.10、24時間後0.61で、どの時点でも意味を考えた方が上だった。一方、時間とともに忘れていく速さに、はっきりした差は見られなかった。

対象: 英国の大学とオンラインで集めた18〜35歳の英語話者(実験1は90人、平均24.3歳) / 限界: 単語の見分けテストで、最長24時間後まで。教科書の文章や、何週間も後の試験で同じことが言えるかは確かめられていない。

PopovとDames(2023)[5]

「覚えようとする気持ちは長く残る記憶に影響しない」という定説を見直した11の実験。全員に単語の意味を判断させ、特定の色の単語だけを覚えるよう指示すると、覚えようとした単語の方がはっきりよく残っていた。著者らは、覚える意図は常に効いているが、従来の実験の組み方では見えにくくなっていた、と結論づけている。

対象: 実験に参加した成人 / 限界: 単語リストの実験で、意味の判断をした上での比較。意味を考えずに気合いだけで覚えることを勧める結果ではない。

Galli(2014)[4]

処理水準の研究をまとめたレビュー。意味を考えて覚えた項目の方がよく残るという結果は、記憶研究の中でも特に安定してくり返し確かめられてきたものだとしている。覚えるつもりがない場面でも効果が出ることも整理している。

対象: 行動実験と、脳の画像研究の文献 / 限界: なぜ深い処理の方が残るのかという仕組みは、まだ完全にはわかっていないと著者自身が書いている。

まとめると、「覚えよう」という気持ちは無駄ではありませんが、それだけでは足りません。残る量の差を大きく生むのは、読んでいる間に意味を考えたかどうかです。そして、深く覚えても忘れる速さは同じなので、日をあけた復習は省けません。

ここで紹介した研究は、若い成人が単語を覚える実験室の研究です。資格試験の用語や英単語を何週間もかけて覚える独学で、同じ大きさの差が出るかは確かめられていません。下の手順は、研究から考えられる工夫として読んでください。

03 今日からできる小さな一歩意味を考えながら覚えるには?

読み上げる・書き写す時間を、意味についての小さな質問に答える時間に置きかえる。1語ごとに「どんな文に入るか」を考え、翌日に本を閉じて確かめる。

1

1語ごとに「どんな文に入る?」を考える

用語や単語を見たら、それが自然に入る短い文を自分で1つ作る。研究で使われた「この文に当てはまるか」という質問を、自分で作る形にしたもの。

所要 1語30秒

2

「仲間はどれ?反対はどれ?」を書き添える

似た意味の語、反対の意味の語、上位のまとまり(「これは○○の一種」)を1つずつ書く。意味のつながりが増えるほど、思い出す手がかりが増える。

所要 1語1分

3

翌日、本を閉じて文を思い出す

深く覚えても、忘れていく速さは同じだった。翌日に、見ずに用語と自分の文を書き出し、出てこなかった語だけ手順1からやり直す。

所要 10語で5分

「なぜ?」と自分に問いながら覚える方法は「なぜ」と問う勉強法の記事に、自分の経験に結びつけて覚える方法は自分に結びつける覚え方の記事にまとめています。

04 続けるためのコツ気合いで覚えようとしてしまうときは?

「何回読んだか」ではなく「何語に文を作ったか」で進み具合を数える。深く考えた後も、日をあけて思い出す練習は続ける。

  • 読み上げた回数を数える代わりに、自分で文を作った語の数を記録する。数える物が変わると、時間の使い方も変わる。
  • 文がどうしても作れない語は、意味がまだわかっていない語。辞書や教科書で使われ方を確かめてから覚える。
  • 深く覚えた語も忘れる。間をあけた復習のタイミングは間をあけた復習の記事を参考にしてください。

05よくある質問

何度も書いたり読み上げたりすれば覚えられますか?

くり返すこと自体が悪いわけではありませんが、字や音をなぞるだけでは残りにくいと考えられています。CraikとTulving(1975)の10の実験では、意味を考える質問に答えた単語の方が、文字の形や音を考えた単語より、後でよく覚えられていました。書く・読むときに「どんな文に入るか」を考えると、同じ時間でも残りやすくなります。

意味を考えて覚えれば、復習しなくても忘れませんか?

忘れます。Pengら(2025)の3つの実験(計282人)では、意味を考えた単語は直後も24時間後もよく覚えられていましたが、時間とともに忘れていく速さには、はっきりした差がありませんでした。深く覚えると出発点が高くなるだけなので、日をあけた復習は必要です。

「覚えよう」と意識しても意味がないのですか?

意味がないとは言えません。PopovとDames(2023)は11の実験で、意味を判断する作業をそろえた上で一部の単語だけを覚えるよう指示すると、覚えようとした単語の方がよく残ることを示しました。覚える気持ちと、意味を考える作業を組み合わせるのがよいと考えられます。

出典

  1. Craik, F. I. M., & Lockhart, R. S. (1972). Levels of processing: A framework for memory research. Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior, 11(6), 671–684. https://doi.org/10.1016/S0022-5371(72)80001-X
  2. Craik, F. I. M., & Tulving, E. (1975). Depth of processing and the retention of words in episodic memory. Journal of Experimental Psychology: General, 104(3), 268–294. https://doi.org/10.1037/0096-3445.104.3.268
  3. Peng, N., Logie, R. H., & Della Sala, S. (2025). Effect of levels-of-processing on rates of forgetting. Memory & Cognition, 53(2), 692–709. https://doi.org/10.3758/s13421-024-01599-4
  4. Galli, G. (2014). What makes deeply encoded items memorable? Insights into the levels of processing framework from neuroimaging and neuromodulation. Frontiers in Psychiatry, 5, 61. https://doi.org/10.3389/fpsyt.2014.00061
  5. Popov, V., & Dames, H. (2023). Intent matters: Resolving the intentional versus incidental learning paradox in episodic long-term memory. Journal of Experimental Psychology: General, 152(1), 268–300. https://doi.org/10.1037/xge0001272