LとRの聞き分け練習の記録表。2択の聞き取り訓練の研究から作った、10回分の練習表と使い方

light と right、glass と grass。聞き分けにくい音は、なんとなく聞き流していても区別できるようになりにくいものです。研究で使われてきたのは、2つの単語のどちらが聞こえたかを選び、すぐ答え合わせをする練習です。この記事では、その研究の条件を、独学で使える10回分の記録表と判定表にしました。
3行でわかる
- 研究で使われてきたのは、2つの単語から聞こえた方を選び、1問ごとに答え合わせをする練習。日本人の大人でも聞き分けが伸び、3か月後も保たれた研究がある。
- 伸びたかどうかは、練習に使っていない単語と声で確かめる。1人の声だけで練習した人は、知らない人の声に伸びが広がらなかった実験がある。
- ただし、声の数を増やす利点は研究で結果が分かれる。記録表は「10回練習して、知らない声で確かめる」を1区切りにした。
01 この表でできること聞き分けの練習は、なぜ記録した方がいい?
聞き分けの伸びは小さく、毎日の手応えではわかりにくいからです。正答率を数字で残し、練習に使っていない声で確かめると、本当に伸びたかを判断できます。
最初にLとRの訓練を報告した研究では、伸びは「小さいが確かな差」でした[1]。毎日の練習で「今日は聞こえた気がする」と感じても、それだけでは判断できません。
もう1つの理由は、練習した単語だけ聞き取れるようになる場合があることです。そこで、練習用とは別の単語・別の声で確かめる欄を表に入れました。LとRが聞き分けにくい理由そのものは英語のLとRが聞き分けられないのはなぜ?にまとめています。
02 表の根拠になった研究聞き分けの訓練について、研究で何がわかっている?
2択で選んで答え合わせをする訓練で、日本人の大人の聞き分けは伸び、3か月後も保たれました。声の数を増やす利点は、研究で結果が分かれています。
Loganら(1991)[1]
日本人に、LとRだけが違う2つの単語のどちらが聞こえたかを選ばせる訓練をした。さまざまな位置にLとRを含む、実際の人の声の単語を多く使った。訓練の前後で、成績に小さいが確かな差が出た。それまでの合成音を使った訓練より、しっかりした方法だったと報告した。
対象: 日本人6人 / 限界: 最初の報告で、人数がとても少ない。
Livelyら(1993)[2]
複数の話し手の声で、語頭・語頭の子音の組み合わせ・母音にはさまれた位置のLとRを練習した日本人は、成績が中くらいに伸び、新しい単語と知らない話し手の声にも伸びが広がった。1人の話し手の声だけで練習した別のグループも練習中は伸びたが、新しい話し手の声には広がらなかった。
対象: 日本人の大人 / 限界: 実験室の訓練で、人数は少ない。
Bradlowら(1997, 1999)[3][4]
複数の声で、長い期間、聞き分けの訓練を受けた日本人の大人は、全員の聞き分けが伸び、新しい話し手の声にも広がった。発音の練習はしていないのに、LとRの発音も英語の母語話者に聞き取られやすくなった。訓練を終えて3か月後も、聞き分けと発音の伸びはともに保たれていた。
対象: 日本語だけを話す大人 / 限界: 研究室での集中的な訓練。独学で同じ量をこなせるとは限らない。
Giannakopoulouら(2017)[5]
ギリシャ語を母語とする大人41人と8歳の子ども52人が、英語の似た母音(sheep の母音と ship の母音)を、ゲーム形式で1日1回、約2週間で10回練習した。4人の声で練習する組と1人の声で練習する組を比べたが、予想された「4人の声の方が伸びる」結果は出なかった。大人では4人の声の方が数字の上では良かったが、一貫しなかった。
対象: ギリシャの大人41人・子ども52人 / 限界: LとRではなく母音の研究。練習と確認の課題の違いが結果に影響した可能性を、著者らも挙げている。
Zhangら(2021)[6]
複数の声で練習する利点を調べた18本の研究(549人)をまとめた。訓練直後の利点は小さく(g = 0.46)、外れ値と発表の偏りを補正すると、ほぼ消えた(g = −0.04)。一方、知らない声への広がり(g = 0.72)と、長い期間の保持(g = 1.09)では大きな利点が見られた。
種類: メタ分析(多くの研究をまとめて分析) / 限界: 研究ごとのばらつきが大きく、著者らは結論を出すにはさらに研究が必要だとしている。
Yaoら(2025)[7]
第二言語の音の訓練を調べた65本の研究(学習者2,793人)のまとめ。訓練には大きな効果が見られた(d = 0.762)。聞き分けの訓練は、発音の訓練より効果が大きかった。成果の測り方では、聞こえた音を選ぶ課題で最も大きな効果が出た。
種類: メタ分析 / 限界: 研究ごとの結果のばらつきが大きい。
ここで紹介した研究は、Giannakopoulouら(2017)は論文の本文で、ほかは論文の要旨(著者がまとめた概要)で内容を確かめました。どれも実験室や学校での訓練です。独学で同じだけ伸びるかは確かめられていません。
03 記録表の使い方聞き分けの練習は、どう組んで記録する?
練習する組を決め、2択で聞いて1問ごとに答え合わせをし、正答率を記録します。10回を1区切りにして、練習に使っていない単語と声で前後を比べます。
表1 研究の条件を、独学の練習に置き換えた表
| 研究の条件 | 独学での練習 |
|---|---|
| 2つの単語から聞こえた方を選ぶ[1][2] | light / right のような組を20〜30組集め、文字を見ずに音声を聞いて、どちらかに印をつける |
| 1問ごとに答え合わせ[5] | 印をつけたらすぐ正解を見て、間違えた組をもう一度聞く |
| 語頭・子音の組み合わせ・語中のLとR[2] | right / light だけでなく、grass / glass、arrive / alive も入れる |
| 複数の話し手の声[2][3] | 辞書の音声やニュースなど、男女・地域の違う2〜4人の声を混ぜる(利点は研究で分かれる[5][6]) |
| 1日1回、約2週間で10回[5] | 1回15分ほど。10回を1区切りにする |
| 知らない声・新しい単語で確かめる[2][3] | 確認用の10組と、練習に使わない声を最初に分けておく |
| 3か月後も伸びが残るか[4] | 練習を終えて3か月後に、確認用の組をもう一度解く |
文字を見ずに聞くために、単語の順番を家族に読み上げてもらう、自分で録音した音声の順番を入れ替えるなどの工夫をします。特定の教材やアプリを使う必要はありません。
表2 10回分の練習記録表(ノートに書き写して使う)
| 回 | 日付 | 声の数 | 問題数 | 正解数 | 正答率 | 間違えた組 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 記入例 | 10/15 | 3人 | 40 | 27 | 68% | grass/glass, crowd/cloud |
| 1 | ||||||
| 2 | ||||||
| 3〜9 | 同じように1回1行 | |||||
| 10 | ||||||
記入例の数字は説明用で、研究の数字ではありません。「間違えた組」が毎回同じなら、次の区切りではその組を多めに入れます。
表3 区切りごとの判定表(練習に使っていない単語と声で解く)
| 時点 | 確認用の正答率 | 見方 |
|---|---|---|
| 練習の前 | % | 出発点。練習の手応えとは別に測る |
| 10回の後 | % | 練習の正答率だけ上がって確認用が上がらないなら、練習の単語と声を入れ替える |
| 3か月後 | % | 保たれていれば、次の苦手な組に移る |
最初に、確認用の10組を分けておく
集めた組のうち10組と、1人分の声は練習に使いません。練習の前にこれを解いて、表3の1行目に書きます。
所要 10分
1日1回、2択で聞いて答え合わせをする
1回40問ほどを目安に、印をつけてすぐ正解を確かめます。終わったら表2に1行書きます。
所要 1回15分
10回終えたら、確認用の組で解き直す
表3の2行目に書きます。練習の正答率ではなく、確認用の正答率で伸びを判断します。
所要 10分
04 続けるためのコツ正答率が伸びないときは、どうする?
数回で伸びないのは珍しくありません。研究でも伸びは小さく、個人差があります。10回を終えるまでは判断を保留し、確認用の正答率で決めます。
- 1回の正答率で一喜一憂しない。最初の研究でも、伸びは「小さいが確かな差」でした[1]。区切りごとの数字で見ます。
- 聞き分けを先に、発音は後から。聞き分けの訓練だけで発音が良くなった研究があります[3]。発音も気になる人は、先に聞き分けを練習します。発音と年齢の関係は大人になってから発音が身につきにくいのはなぜ?にまとめています。
- 単語の記録とまとめて管理する。単語の復習の記録は英単語の復習スケジュール表と同じノートにつけると、続けやすくなります。
05よくある質問
LとRの聞き分けは、何回くらい練習すればいい?
研究によって違います。ギリシャ語を母語とする大人41人の実験では、1日1回、約2週間で10回の練習をしました。日本人の大人の研究では、もっと長い期間の訓練をしています。この記事の表は10回を1区切りにし、区切りごとに伸びを確かめる形にしています。
いろいろな人の声で練習した方がいい?
はっきりしていません。1人の声だけで練習した日本人は、知らない人の声に伸びが広がらなかった実験があります。18本の研究のまとめでは、訓練直後の利点は偏りを補正するとほぼ消えた一方、知らない声への広がりと長い期間の保持では大きな利点が見られました。複数の声を混ぜつつ、練習に使っていない声で確かめるのが無難です。
聞き分けの練習をすると、発音も良くなる?
良くなった研究があります。日本人の大人が聞き分けの訓練だけを受けたあと、LとRの発音が英語の母語話者に聞き取られやすくなり、3か月後も保たれていました。ただし65本の研究のまとめでは、どの訓練も発音より聞き取りの方を大きく伸ばしていました。
出典
- Logan, J. S., Lively, S. E., & Pisoni, D. B. (1991). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: A first report. The Journal of the Acoustical Society of America, 89(2), 874–886. https://doi.org/10.1121/1.1894649
- Lively, S. E., Logan, J. S., & Pisoni, D. B. (1993). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/. II: The role of phonetic environment and talker variability in learning new perceptual categories. The Journal of the Acoustical Society of America, 94(3), 1242–1255. https://doi.org/10.1121/1.408177
- Bradlow, A. R., Pisoni, D. B., Akahane-Yamada, R., & Tohkura, Y. (1997). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: IV. Some effects of perceptual learning on speech production. The Journal of the Acoustical Society of America, 101(4), 2299–2310. https://doi.org/10.1121/1.418276
- Bradlow, A. R., Akahane-Yamada, R., Pisoni, D. B., & Tohkura, Y. (1999). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: Long-term retention of learning in perception and production. Perception & Psychophysics, 61(5), 977–985. https://doi.org/10.3758/BF03206911
- Giannakopoulou, A., Brown, H., Clayards, M., & Wonnacott, E. (2017). High or low? Comparing high and low-variability phonetic training in adult and child second language learners. PeerJ, 5, e3209. https://doi.org/10.7717/peerj.3209
- Zhang, X., Cheng, B., & Zhang, Y. (2021). The role of talker variability in nonnative phonetic learning: A systematic review and meta-analysis. Journal of Speech, Language, and Hearing Research, 64(12), 4802–4825. https://doi.org/10.1044/2021_JSLHR-21-00181
- Yao, Y., He, M., Chen, F., & Zhu, J. (2025). A meta-analysis of second language phonetic training: Exploring overall effect and moderating factors. Journal of Speech, Language, and Hearing Research, 68(4), 1784–1802. https://doi.org/10.1044/2024_JSLHR-24-00432


