AIに作文を添削してもらったら直しが多すぎて、書く気がなくなった。どう立て直す?「重要な3つ」に絞って頼み直す6つの手順(フィードバックと自動添削の研究)

英作文やレポートをAIに見てもらったら、赤字の直しがずらりと並んだ。全部読む気になれず、そもそも書くこと自体がいやになった。そんな経験をした人は少なくありません。研究では、フィードバックは平均すると学習を助けますが、一部はかえって成績ややる気を下げることもわかっています。違いを生むのは、直しの量より中身と受け取り方です。AIへの頼み方を変えて、もう一度書き始める手順を紹介します。
3行でわかる
- 435件の研究(6万1,000人以上)をまとめたメタ分析では、フィードバックの効果は平均d=0.55だったが、17%の効果はマイナスだった。やる気についての効果では21%がマイナスで、その86%は中身のない「ほめる・けなす」型だった。
- 自動の添削のメタ分析(20件・2,828人)では、作文への効果はg=0.55。3回以上続けた研究では0.66、1〜2回だけでは0.18で、はっきりした効果は確認できなかった。
- 立て直しは「直しは重要な3つまで・理由つきで頼む→直された文をもらわず自分で書き直す→言い方を『提案』にしてもらう→3回以上続けてから判断する」。生成AIの添削で同じ効果が出るかは、まだ確かめられていない。
01 悩みの正体AIの添削で書く気がなくなるのはなぜ?
直しが多すぎると、どれが大事かわからず「自分はできない」という評価だけが残りやすいからです。書く力が足りないのではなく、受け取り方の設計が合っていない状態です。
AIは頼めば、細かい言い回しまで全部直してくれます。ところが、20か所の直しを前にすると、どこから手をつければよいか決められません。読み切れない直しは、学ぶための情報ではなく「ダメ出しの量」として届きます。
研究でも、フィードバックは効果がプラスになるとは限りません。中身のない評価だけのフィードバックは、やる気を下げやすいことが示されています[1]。やる気を失ったのは意志が弱いからではなく、受け取り方を変える合図と考えます。
02 科学的にわかっていること直しの多いフィードバックは逆効果?
フィードバックは平均では学習を助けますが、2割近くは逆効果でした。効くのは、直し方や進め方まで伝える情報の多いもの。自動の添削は、続けたときに効果がはっきりしました。
Wisniewskiら(2020)[1]
教育でのフィードバックの研究をまとめたメタ分析。効果は平均d=0.55(中くらい)だったが、17%の効果はマイナスだった。やる気についての効果では21%がマイナスで、その原因になったフィードバックの86%は、ほめる・罰するだけの中身のないものだった。情報が多いほど効果は大きかった(下の表)。
対象: 435件の研究、6万1,000人以上(教育の場面での研究) / 限界: 研究ごとのばらつきがとても大きい。対照群のある研究(0.42)より、前後をくらべただけの研究(0.63)で効果が大きく出ていた。
| フィードバックの中身 | 効果の数 | 効果の大きさ(d) |
|---|---|---|
| ほめる・けなすだけ(報酬・罰) | 39件 | 0.24 |
| 正しい・間違いと直し方を伝える | 238件 | 0.46 |
| 直し方に加え、自分の進め方を見直す情報もある | 42件 | 0.99 |
Wisniewskiら(2020)[1]の表より。学校や大学の学習全般の研究で、作文だけの数字ではない。
Fleckensteinら(2023)[2]
自動で作文を評価・添削するツールの効果をまとめたメタ分析。作文の出来への効果はg=0.55(中くらい)。3回以上続けた研究では0.66と大きく、1〜2回だけの研究では0.18と小さく、はっきりした効果は確認できなかった。
対象: 20件の研究、2,828人(中高生・大学生、母語と外国語の両方) / 限界: 研究のばらつきが大きく、くらべた条件の差はどれも統計的にははっきりしなかった。調べたのは生成AI以前の添削ツールで、ChatGPTなどの生成AIは含まない。
Lvら(2021)[3]
英語を外国語・第二言語として学ぶ人の作文に、オンラインのフィードバックが効くかをまとめたメタ分析。全体の効果はg=0.753。自動のフィードバックだけでみるとg=0.696で、研究によって幅がある(95%信頼区間0.211〜1.182)。
対象: 17件の研究、1,568人(主に大学生) / 限界: 自動のフィードバックの研究は5件と少ない。教師のフィードバックの大きな効果(2.248)は1件の研究だけの数字。
Mouratidisら(2010)[4]
失敗やミスのあとにコーチから受ける修正の指摘について調べた研究。相手の考えを尊重する言い方(自律を支える言い方)で指摘を受けていると感じている選手ほど、続けたい気持ちと心の健康が高かった。著者は、「まだ力が足りない」と伝える指摘でも、言い方しだいでやる気を保てるとしている。
対象: ギリシャの10代のスポーツ選手337人 / 限界: 一時点の調査で、因果はわからない。勉強や作文ではなくスポーツの研究。この記事では論文の要旨で確認した。
直しを絞ると作文の正確さがより伸びる、と示した研究ではありません。下の手順で直しを絞るのは、読み切って書き直せる量にし、やる気を保つためのこの記事の提案です。
03 今日からできる小さな一歩AI添削でやる気をなくしたら、どう立て直す?
直しは「重要な3つまで・理由つき」で頼み直し、直された文はもらわずに自分で書き直します。言い方を「提案」にしてもらい、3回以上続けてから効果を判断します。
直しの山はいったん閉じる
前回の直しを全部やり直そうとしなくて大丈夫です。フィードバックの17%は逆効果になっていました[1]。直しの量は、あなたの力の点数ではありません。新しい短い文章から始め直します。
所要 1分
「重要な順に3つまで、理由と直し方つき」と頼む
例: 「意味が伝わらない所を優先して3つだけ。なぜ問題か、どう直すかも1行ずつ」。情報が多いフィードバックほど効果が大きくありました[1]。3つという数は、読み切れる量としてこの記事がすすめるものです。
所要 2分
直した文はもらわず、自分で書き直す
「書き直した文は見せないで」と添えます。指摘をもとに自分で直してから、もう一度見てもらいます。直された文を受け取るだけでは書く力が伸びるとは限らないことは、AI添削の研究の記事にまとめています。
所要 10分
言い方を「提案」にしてもらう
「直すかどうかは私が決めるので、提案として書いて」と頼みます。尊重する言い方の指摘を受けている人ほど、続けたい気持ちが高かった研究があります[4](スポーツの調査で、作文での効果は未確認)。
所要 30秒
直された種類を1行で記録する
「冠詞」「時制」「主語がない」など、毎回の指摘の種類をノートに1行で書きます。次に書くときは、その1つだけ気をつけます。進め方を見直す情報まで含むフィードバックが最も効果が大きかったことから[1]、この記事が考えた使い方です。
所要 2分
3回以上続けてから効果を判断する
週1〜2回、短い文章で続けます。自動の添削は、3回以上続けた研究で効果が大きく、1〜2回では効果がはっきりしませんでした[2]。1回の添削で「向いていない」と決めないことが大切です。
所要 1回15〜20分
04 続けるためのコツまた直しの多さに落ち込みそうなときは?
指摘の数ではなく、記録した「同じ間違いの種類」が減っているかで進み具合を見ます。書く量を減らしてでも、続ける回数を守ります。
- 文章は短く始める。3〜5文なら、直しも少なく、書き直しまで終えやすい。
- 直しの数は毎回くらべない。長く書けば直しも増える。記録した種類が減ったかを見る。
- AIの指摘そのものが間違っていることもある。おかしいと思った指摘は、辞書や教材で確かめる。確かめ方はAIの誤りで覚え違えたときの記事を参考に。
- AIに頼りすぎて自分で書けなくなったと感じるときは、AIなしで解く力を取り戻す記事も参考になる。
05よくある質問
AIに全部直してもらった方が早く上達しませんか?
全部の直しを受け取ることが悪いとは限りません。ただ、読み切れずに書くのをやめてしまうなら意味がありません。研究では、ほめる・けなすだけより、直し方や進め方まで伝える情報の多いフィードバックの方が効果が大きく出ています。読み切って書き直せる量に絞る方が続けやすくなります。
AIの添削は、先生や人の添削より効果が低いですか?
英語の作文のメタ分析では、オンラインの自動フィードバックにも効果がありました(g=0.696)。教師の方が大きく見える数字は1件の研究だけのものです。生成AIの添削と人の添削をくらべた研究はまだ少なく、どちらが上とは言い切れません。
何回くらい続ければ効果がわかりますか?
自動の添削のメタ分析では、3回以上続けた研究で効果が大きく、1〜2回だけでは効果がはっきりしませんでした。週1〜2回のペースで、少なくとも数週間は続けてから判断するのがよいでしょう。
出典
- Wisniewski, B., Zierer, K., & Hattie, J. (2020). The power of feedback revisited: A meta-analysis of educational feedback research. Frontiers in Psychology, 10, 3087. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.03087
- Fleckenstein, J., Liebenow, L. W., & Meyer, J. (2023). Automated feedback and writing: A multi-level meta-analysis of effects on students' performance. Frontiers in Artificial Intelligence, 6, 1162454. https://doi.org/10.3389/frai.2023.1162454
- Lv, X., Ren, W., & Xie, Y. (2021). The effects of online feedback on ESL/EFL writing: A meta-analysis. The Asia-Pacific Education Researcher, 30, 643–653. https://doi.org/10.1007/s40299-021-00594-6
- Mouratidis, A., Lens, W., & Vansteenkiste, M. (2010). How you provide corrective feedback makes a difference: The motivating role of communicating in an autonomy-supporting way. Journal of Sport and Exercise Psychology, 32(5), 619–637. https://doi.org/10.1123/jsep.32.5.619


